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A社はT社から大口の受注を受けた。現状の自社生産キャパではまかないきれないため、
対応するためには大規模な追加投資が必要なことがわかってきた。
さてあなたが経営者ならどうされるだろうか。

前提条件

最低注文数 50,000台/月×12ヶ月=600,000台
売価 10,000円
総売上げ見込み 60億円

A社 今回の主役
T社 受注先
C社 同業他社協力先 ※C社の品質、加工レベルはA社と同程度と仮定している

案1 追加投資をして生産能力の拡大をする
案2 自社の稼働率をあげる(休業時間や休業日を返上して対応)
案3 協力工場にライセンス供与し、生産を一部委託する

■案1 追加投資をして生産能力の拡大をする

景気がのぼり調子のご時勢であれば皆、案1をとってきたであろう。
かつては 売上げ拡大=会社の規模拡大=収益拡大 といった考え方が主流であった。
自社の生産キャパを増やすことで売上げ高の拡大が見込め、会社の規模拡大と収益拡大につながる。日本の製造メーカーはのきなみこういった戦略をとってきた。しかし、昨今の製造業ではこういった戦略では生き残っていけなくなっている。
なぜなら生産変動の波が激しすぎるからである。スポットで増えた受注を、特に大きな規模の受注を受けたときほど慎重に設備投資の抑制とキャッシュフローの健全化を意識した戦略をとるべきである。

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単純にこの時の利益はしっかり出ているが、大きくなった工場を継続して埋められるかが課題となる。

■案2 自社の稼働率をあげる(休業時間や休業日を返上して対応)

とはいえ、せっかくとれた大口の受注を”無”にしてしまうなどもったいないことはない。
そこで、案2をとる経営者も多い。作業員に残業を指示し稼働率を上げて対応する。
しかし、こういった場合には品質の悪化問題が多発し、その分を埋めようと作業時間がさらに増え、社員が疲弊し悪循環に陥るケースが多い。これが1年以上続いてくると会社の雰囲気も悪くなってくる。
また、残業代の支払いが高額になり、結局のところ利益につながらない。せっかくの大口の仕事がほとんど利益を産まないただ疲弊するだけの仕事になってしまう。

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■案3 協力工場にライセンス供与し、生産を一部委託する

そこで案3のような方法をご検討いただきたい。
今回は、受注した60万台のうち 半数にあたる30万台をC 社(協力工場)にライセンス供与し、委託する方法を試算してみた。数量に関しては半数に限定せず、生産規模とキャパ、協力工場の生産能力なども考慮して決定いただきたい。

ポイント
①あくまで協力工場としてC社にT社との交渉権は与えない
②材料はA社で手配し、調達先の金型は共用して材料費単価はUPさせない
③C社に作らせたあと、買取や品質チェックなどはせず、T社へ直納を基本とする

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材料費は総数量でA社が材料メーカーに交渉し、同じ単価で調達できるものとする。
ただし材料費の支払いとT社への出荷やT社からの売上げの支払いは直接するものとする。
材料の調達をC社にしてもらうことで半分の材料費分のキャッシュは浮いてくる。
設備投資についても拡張費用が不要になり、製造設備もC社に投資をお願いすればA社としての支払いは抑制できる。
また、規模を拡大すると人材の確保も必要になるが、そこも他社の人材を活用することで新しい人材の人件費や採用費用、教育費用、手当てなどを抑制できる。
また、一番大きいのは次の受注が取れなかったときの休眠設備の発生リスクを回避できる。

案3にするメリット

キャッシュフローの改善 材料調達費と設備投資費両面で
人材確保によるリスクの抑制
次の受注が取れなかったときの休眠設備の発生リスク回避

あくまで試算であり、協力工場のレベルや交渉の仕方によってはうまくいかないこともある。
しかし、同業他社をただのライバルとしてでなく、仲間として仕事を共有してお互いの利益が出るパートナーとしていく戦略が現代では必要不可欠な戦略となっている。
また、「売上げ拡大ではなく、利益の拡大の戦略」が必須である。

ライセンスの契約に関するご相談は弁理士まで。

原 渚

1979年千葉県生。東京理科大学理工学部経営工学科卒業。
大手電機メーカーにて原価管理、経営管理、企画部門を歴任。
26歳の時、当時史上最年少で1万7千人規模の中国海外拠点の管理部門に出向し、VE導入やコストダウンに取り組み、成果を挙げる。若くして得たグローバルな視点やコストマネージメントや経営ノウハウを活かし、某社退職後、有料自習室の経営及びファイナンシャルプランナーとして活躍中。