コラム
Column
スマートフォンのカバーケースなどを手掛けるNATURAL designの社長でありデザイナーでもある下村茂孝氏に話を伺いました。
写真:iPhoneのカバーケースとして大ヒットした「Apple Magic」
建築デザインからプロダクトデザインへのシフトに成功した同社。
同社の取り組みは、プロダクトデザインへの参入を考えている企業の参考になるのではないかと考え、取材させていただきました。
同社は建築デザインをおこなう会社として2010年に起業しましたが、まもなく東北の震災が発生したため、建築資材の不足等のから事業継続の問題が生じました。
同社社長である下村氏は元々、所属するスタッフの資質を考えると将来的には業態を変えるべきだと考えており、震災のピンチを契機として、最終商品を設計・開発するプロダクトデザインに舵を切りました。
そして、アップル社のマークに調和するデザインをもつiPhoneケースをデザインし、10万個以上の販売を記録するヒット商品としたのです。
「デザインが頭2つ上で、価格が頭1つ下にある商品」を出せば必ず売れるという信念で商品開発を行い見事に成功を収めました。
ただ、初めて行うプロダクトデザインは始めからうまくいくことばかりではなく失敗も多くあったそうです。
当初、シャンデリアをデザインして販売しようとしたところ、日本で製造するとコストが想定の数倍かかることが判明し、かといって中国で製造すれば輸送費が1つにつき6,000円もかかるので、コスト面で勝負できないということがありました。
会社に体力がない状況ではサイズの大きな商品は難しい、ということから、輸送コストを抑えられる小さな商品で、かつ、自社の強みであるデザインを最大限活かすことのできそうなモバイルのケースに参入することにしたとのことです。
今回伺った中で、下村氏がおっしゃっていた「失敗は成功にピントを合わせるためのカメラのフォーカスみたいなもんだよ」という言葉がとても印象的です。
初めて行うことには当然のように失敗がありますが、その失敗の原因を突き詰め、次に活かすアクションが、いずれ成功に照準を合わせてくれるのだと感じました。
現在、同社はモバイルのケースの他にも、アクセサリーなどさまざまな商品のデザインにも取り掛かり、ヒット商品を生み出しています。
このように継続してヒット商品を生み出すことができたのは、最初にヒット商品を生み出した際に販売ルートを作る努力があったことも活きています。
下村氏は「商品力×認知度=販売力」だと仰います。
どんなにいい商品を開発しても地下室に閉じ込めておいたら1つも販売できないし、宣伝広告や営業をいくら仕掛けても商品力が低ければ結果はなかなかでません。
商品力とその商品の認知度を最大化することが最良の結果につながると考えているという話を伺い、いい商品を作るだけではなく販売するところまでを戦略的に取り組むことが商品のヒットにつながるのだと感じました。
数多くのヒット作品を出す中で特許や商標などの知的財産権との付き合い方を聞いたところ、以下のように話してくれました。
特許や商標などの知的財産権をどう扱うのかを考える場合、まずその目的を明確にしなくてはなりません。
僕は知的財産権の目的は大きくわければ2つあると思います。
ひとつは、自分たちが所有する知的財産を他者に侵害された場合、正当な金銭を回収するために活用するという目的。
もうひとつには、知的財産の登録をすることにより、他者に自分たちの権利を認識させて他者が自分たちの利益の妨害に
なることを未然に防ぐということです。
当然そこは費用対効果だと考えます。
知的財産権を有するのにかかるコストと知的財産権を有したことにより得ることができるであろう金銭とのバランスだけだと思います。
なんでもかんでも知的財産権を登録していけば、その手間と費用はどんどんかさんでいきますのでかかる費用をしっかり計算し、それに見合うだけの知的財産かどうかをしっかり予測する能力が必要になってくると思います。
それにより、”あのとき特許をとっておけばよかった”や”こんなに商標を登録する必要はなかった”と後悔するようなことは防げると考えています。
新しい商品を作るときには、攻めの知的財産権と守りの知的財産権があると感じます。
そこの判断をご自身の中で明確に持っているところが、同社のブレない強さとデザインに現れていると感じました。
写真:楽天市場で大ヒット商品となったスマートフォン用カバーケース
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