6.侵害の事実の確認作業について

警告書を受け取ってから、回答期限までの時間が十分にある場合は、1回目の回答書を作成する作業と並行してB:侵害の事実の確認作業を行うことができるかもしれません。
今回は、この侵害の事実の確認作業について具体的に説明いたします。

  1. そもそも正当な権利が存在するか確認する。
  2. 正当な権利者からの警告であるのかを確認する。
  3. 具体的な侵害行為の有無を調査する。

(i) そもそも正当な権利が存在するのかを確認する。

特許庁が無料で使用を開放しているJ-PlatPatを利用して、警告の根拠となった権利の状態を確認しましょう。
J-PlatPatでは、「特許・実用新案」、「意匠」、「商標」のそれぞれの情報を無料で検索することができます。
知的財産関連の話題では様々な種類の番号が登場します。それぞれの意味を間違えると、正しく検索ができません。次にいくつかの番号を説明するので、参考にしてみてください。

出願番号
〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇、商〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇、意〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇等と表示されるもので、出願ごとに付与される番号です。言い換えれば、「誰でも(どんな内容でも)出願さえすれば取得できる番号」です。
公開番号
特許について特〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇という形式の番号です。これは、原則、出願から1年半の間をおいて特許出願の内容が公開公報として公開された際に出願ごとに付与される番号です。
登録番号
特許庁の審査官による適切な調査を経て登録された権利には、それぞれ、特許の場合は「特許第〇〇〇〇〇〇〇号」、意匠の場合は「意匠登録第〇〇〇〇〇〇〇号」、商標の場合は「商標登録第〇〇〇〇〇〇〇号」と、登録番号が付与されます。
この登録番号が付与されている場合は、特許庁が認めた権利となり、正当な権利が存在する可能性が高いと考えられますので、慎重な対応が必要です。
著作権登録番号
文化庁が所管する著作物の登録制度によって付与される番号です。小説や漫画、プログラムなどの著作物を登録すると付与されます。文化庁が所管するものであるので、前述した特許庁のJ-PlatPatでは検索することができません。
なお、著作権登録は、これは特許権や商標権とは異なり、無審査で登録することができます。また、そもそも著作権は、登録の手続きを行わずとも成立する権利ですので、著作権について争う場合には、著作権登録番号の有無によって対応が変わるということはあまりありません。

登録番号をJ-PlatPatで検索して、特許・実用新案・意匠・商標の権利の詳細を調べるのが第一です。
まずは、権利の存否として、その権利が存続しているのかを確認します。
一度成立して登録番号が付与された権利といえども存続期間を徒過して消滅している可能性もあります。また特許料(年金)不能による消滅や、無効審判による消滅もあり、存続期間を待たずに消滅する権利も少なくありません。警告書に記載された権利が正当に存続しているのかを確認しましょう。

警告書を送ってくる「権利者」を自称する人の中には、「出願=権利化」と勘違いをして警告書を送ってくる方もいるようです。出願番号だけ(または公開番号だけ)が記載されている場合は、「本当に権利が成立しているのか?」を必ず確認しましょう。
登録前の「出願番号」及び「公開番号」の段階では、それほど恐れることはありませんが、後に権利として登録される可能性はありますので、注意が必要です。

(ii) 正しい権利者からの権利主張であるかを確認する。

次に確認すべきは、その「登録権利の所有者(権利者)」と、警告書の送り主が一致しているかどうか?という点です。
前述したJ-PlatPatでは、権利の状態と同様に権利の所有者(権利者)を確認することができます。
検索の際、前提として、我が国の知的財産制度においては発明者(創作者)≠権利者であるということと、権利は他人に譲渡可能であるということを知っておく必要があります。

権利を根拠に警告をするのですから、正当な権利者ではない人からの警告は無視しても問題ありません。
警告書の送り主が、正当に権利を有する人か否かを必ず確認しましょう。
例えば、警告書の送り主Aさんが特許権に係る発明の発明者であったとしても、その特許権の権利者はAさんではなく、所属する企業B社かもしれません。その場合、Aさん名義での警告には根拠はなく、B社からの警告なら対応を考えざるを得ないところです。
更には、特許権がB社から別のC社に売却(譲渡)されている場合には、その売却後にB社が警告をしてきたとしても、それも根拠のない話です。

少し話はそれますが、警告書に代理人として記載されている弁護士や弁理士についても、本当に登録された者か等をインターネットで調べてみることをお奨めします。

知的財産制度の知識を悪用する詐欺事件の可能性も踏まえて、警告書が正当な権利に基づくものかをしっかり確認する必要があります。

(iii) 具体的な侵害行為の有無を調査する。

警告書に記載された権利が存在し、且つ、正当な権利者が警告をしていることが分かったら、権利に瑕疵が無く侵害行為の事実があるのかを検討すべき段階に入ります。

「権利に瑕疵が無く」とは、本来は登録されるべきものではないとする無効理由が存在しないか確認するものです。どのようなものが無効理由に該当するのかは、特許法等それぞれの知的財産権の法律に定められています。
「侵害行為の事実があるのか」は、権利の範囲に自身が行っている行為(例えば製造する製品など)が入っているのかを判断するものです。この判断は、可能な限り客観的な判断を行うべきものです。立場や考え方によって対応方法を異にすることはあるでしょうが、侵害の判断自体は冷静に行う必要があります。

(i)と(ii)の項目は時間と手間さえかければ、誰でも確認ができると思います。しかしながら、(iii)の項目に関しては専門家の知識を頼ることをお奨めします。法律と技術・デザイン・トレードマークなど、専門家ならではの勘所も必要なところであるからです。
また、(iii)の判断は得意分野・経験・立場などによって人ごとに異なる結果がでることも少なくありません。したがって、可能であれば複数の専門家の意見を求めるのも有効な手立てではあります。

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