「サッカー」は登録商標だったことがある

「<サッカー」という言葉について実は日本ハムが以前、商標登録をしていました(商標登録第3210877号、平成28年10月消滅)。 その商標登録が有効であった場合、「サッカー」という言葉を他の人は使うことができないのでないか、と考えるかもしれません。そもそも、「サッカー」という一般に使われるべき言葉が何故商標として登録されてしまったのか、とも。

商品やサービスとの関係

商標は、(1)商標(標章)と、(2)その商標を使う商品または役務(サービス)が指定されて登録されています。
日本ハムが持っていた登録商標第3210877号は、(1)商標「サッカー」について、(2)商品として肉製品等を指定していました。したがって、その商標登録(商標権)では、ハムなどの肉製品に「サッカー」を使うことは排他的に独占できますが、肉製品以外、例えば競技のサッカーやサッカー用品に関する商品やサービスについて「サッカー」と使うことを排除する能力はないわけです。

肉製品に「サッカー」と名付けるのは一般的ではないですよね。ですので、日本ハムはこの商標を登録することができました。
一方、競技のサッカーやサッカー用品に関する商品やサービスに「サッカー」とつけるのは、一般の名称であったり、単にその質などを指すものであるので、商標登録はできず、だれでもその名称を使用できるようにしています。

ほかにもある。単純な言葉の登録商標

世の中には他にも一般的な言葉が数多く商標登録されています。リンゴの英語訳である「APPLE」もその代表例でしょう。
商標を「APPLE」、指定商品を「電子計算機(コンピューター)」とした、アップル インコーポレーテッド(Apple社)の商標登録第1758671号が存在します。
Apple社は他にもいくつか登録商標を有していますが、当然、果物のリンゴを指定商品とする登録商標はありません。

商標登録は、その指定した商品やサービスまたはその商品やサービスに類似した商品やサービスの範囲までしか、効力(他人を排除する能力)が及びません。
まったく異なる商品やサービスに関しては効力が及ばないですし、もしかしたら他の人がそのような商品やサービスについてそっくりな商標を登録できるという可能性もあります。

ここまでの説明によれば、商標登録する際には、指定する商品やサービスを増やして権利の範囲を広げればいいように思われます。
しかしながら、商品やサービスを増やすと出願料や登録料も上がりますし、使っていない登録商標は不使用取消審判という制度によって取り消されてしまうリスクもあります。
商標登録を検討する際は、まずは自社が使う商標の商品とサービスを中心に出願するのが一般的です。
また、既にそっくりな商標が登録されているといっても、商品やサービスが異なる場合もあるので、性急に商標の使用や出願をあきらめる必要はありません。登録商標の指定商品または指定役務(サービス)と、自分が商標を使いたい商品やサービスをじっくりと見比べることが大切です。

サッカーボール

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)