地域との共生のための8年

開放特許という言葉を聞く機会も増えてきた昨今ですが、なぜ大手企業が大事な特許技術を開放するのかというところも気になると思います。
今回は開放特許施策に力を入れる大企業の一つである富士通株式会社の方に伺いました。

富士通が開放特許に取り組み始めたのは約8年前からだそうです。同社の知的財産部門が置かれる神奈川県川崎市が、中小企業の製品開発や技術力の高度化・高付加価値化に大企業等が保有する特許技術を活用していく事業に取り組み始めたことがひとつの契機だったといいます。
当初は思うように中小企業と特許技術のマッチングが進まなかったものの、地道に活動を続けたそうです。活動を続けられたのは、地域と共生しWin-Winの関係を構築していくという、新しい視点での知財活用に組織的に取り組んだからだと話します。

多くの方に技術を使ってもらいたい

良質な技術を世の中に広めていくことが、富士通が開放特許の活用に取り組む目的といいます。
技術者が努力して開発した成果(=特許技術)を自社の特定のビジネスに使うだけではなく、世の中に展開させることで、事業領域外の分野においてもその成果を広く共有することができます。研究者・技術者にとっては、開発した技術が自社だけでなく社会で広く活用されるということは、大きなモチベーションとなるそうです。

特許技術を利用する側の視点に立てば、地域企業で新商品が生まれる助けになるため、地域創生の有力なツールにもなるのではないかと言われます。
地域創生については、信用金庫などの地域金融機関と連携した活動も行われています。地域金融機関にも開放特許を取引先の経営支援メニューの新たなツールとして活用してもらえるように、今後も積極的に取り組んでいきたいと話します。

特許技術を開放する側にとっては、前述した開発力のモチベーションUPに加え、特許使用料の収入を得られる可能性があるため、地域との共生、すなわち、Win-Winの関係を見出しています。

開放特許を使って商品化に成功する企業

今まで開放特許を活用して商品化・事業化が成功した企業の共通点を聞くと、経営者に新しいことをやってみようというマインドがあることだと話します。開放特許を使った新商品開発は、ときには新しく創業するくらいの熱意が必要なのだそうです。

また、特許技術は部品に過ぎません。特許技術だけに頼るのではなく、自ら付加価値の高い製品づくりを進めて行く創造力も必要ということです。そのためには、自ら目利きをして自社にあった開放特許を選ぶことも重要なのだと感じました。

「開放特許ってなに?」という方もまだまだいらっしゃいます。引き続き、特許を活用する魅力を発信し続ける努力も必要と感じているそうです。
まずは気になる方は気軽に相談して欲しいと話されていました。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)