シャンプーとリンス

シャンプーとリンス、たいていは隣どうしに置いてあるので間違えてプッシュしてしまったこともあるのではないでしょうか。間違えた1プッシュ分、もったいないですよね。
同じ銘柄のシャンプーとリンスは一見すると同じ形状のボトルですが、実は、シャンプーのボトルの側面にだけギザギザが付けられていて、目を閉じていてもボトルを手で触ってギザギザの有無を確認することでシャンプーかリンスかを簡単に判別できるというユニバーサルデザイン(UD)であることはご存じですか?日常の豆知識ですね。

そんなシャンプーボトルのギザギザの誕生から普及までについて、知的財産の面から紹介する記事を見つけました。

シャンプーボトルのギザギザ、実は花王の発明って知ってた? あえて実用新案登録を取り下げ、業界全体に普及 – ねとらぼ 2017.09.04

あのギザギザは花王のアイデアだったのですね。花王のウェブサイトにも紹介がありました。

「容器が同じで紛らわしい」「目を開けにくい状況で区別できない」などの消費者の声を受けた花王が、試行錯誤の末にギザギザの入った「きざみ入り容器」を考案し、一度は実用新案として出願したそうです。
しかし、このようなボトル形状は業界で統一されていないと消費者が混乱してしまうと考え、花王は実用新案登録出願を取り下げて業界各社に働きかけ、ギザギザの入ったシャンプーボトルの普及を推進してくれました。

実用新案
新しい技術について実用新案権を取得した権利者にその技術の独占を認める制度で、特許制度とよく似た制度です。
ただ、特許の対象である高度な技術=発明よりも容易な技術=考案を対象とする点や、物品のみを対象として例えばプログラムや何らかの方法などは対象としない点、無審査で権利を登録できる一方で権利行使に一定の責任が課される点など、特許制度との違いもいくつかあります。
また、特許の権利期間が出願から20年であるのに対し、実用新案権の権利期間は出願から10年と短いのも特徴です。

花王が権利取得を放棄したことで同業他社の賛同が得やすくなり、ギザギザの入ったシャンプーボトルの普及に繋がったのではないでしょうか。
そのおかげで今日、私たちは(ギザギザの意味を知っていれば)シャンプーとリンスを間違えることなくバスタイムを楽しむことができます。

お風呂場

他にもある技術開放事例

花王の事例は権利の取得を放棄したことによって技術が普及した例でしたが、取得した権利を保持したまま技術を無償開放した例もあります。
安全性の高い3点式シートベルト(現在の一般的なシートベルト)は、ボルボの特許技術が無償開放されて普及したものですし、日本のダイキン工業環境負荷を軽減できる冷媒に関する特許技術を開放していることが知られています。
また、トヨタ自動車燃料電池車に関する特許技術を無償開放して燃料電池車の普及を図るとしたことが話題にもなりました。

竹村 恵一

弁理士。
主に知財ニュースを担当。
家庭ではたこ焼き担当。
趣味はフットサル。最近は、低下した体力に見合った新たな趣味を模索中。