コラム
Column
特許技術が入った石鹸の開発を行ったのは、建築や改装中の建物を汚れや傷から守る「養生資材」の卸業を営む宝養生資材株式会社(川崎市)です。
同社は従業員16名の企業ですが、総特許出願件数は70件を超えるとのこと。同規模の卸業者で、これほど多くのアイデアを出願する企業は全国的にみても珍しいのではないかと思います。それは起業当初から、取引先で聞いた課題をものづくり力で解決していった結果だと話します。
近年、同社が開発したのが高い抗菌機能を持つ強アルカリ水「アプリテック」。建物の養生だけではなく今後は人の養生に対しても力を入れていきたいという考えから生み出されたそうです。
吉村政城社長の熱心な解説を富澤と中村が伺いました。
「アプリテック」は特許権も取得した先進的な発明です。しかし、世の中に技術を広めるためにはブランド力も必要だと感じたそうです。
いい技術でも、養生資材の会社がなぜ強アルカリ水の商品を作り出したのかとよく言われた事から感じたのだそうです。そこで、同社は東京大学と富士通が共同開発した抗菌・消臭機能を有する光触媒「チタンアパタイト」を使うことに決めたそうです。チタンアパタイトには抗菌・消臭機能があるため石鹸にも採用できるのではと考えたのがそもそもですが、それ以上に東京大学と富士通というブランドの力を取り入れることに期待したのだそうです。中小企業の知名度の低さを補う一つの手段として、開放特許を活用するという手段を選んだのです。
商品のパッケージにも「東京大学と富士通が共同開発したチタンアパタイトを採用」と明記がされています。開放特許を使う一つの魅力として大手企業や大学が持つネームバリューを貸してもらえるのもあるのだと実感しました。
商品「エステルの瞳」。箱の中にもチタンアパタイトの説明とアプリテックの説明が記載されています。
外箱にはチタンアパタイトの説明があります。
開放特許を使った製品作りが「川崎モデル」と言われ全国から注目を集めるようになり、特許権者のネームバリューを借りるだけに留まらず、先進的なものづくりの事例として知名度を上げることになりました。
吉村政城社長は開放特許を活用した製品作りをしたことによる効果について、第一にブランドを借りることができたこと、第二に、会社内での風潮として製品開発が認められるようになったことだと言います。製品開発の成功事例を作ったことで、一層製品開発に取り組みやすい方向に動いているようです。
左上:エステルの瞳, 右上:川崎力石鹸, 下:宝養生せっけん
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