コラム
Column
今回は、開放特許を活用したことで、大きな宣伝効果を上げた事例を紹介します。
神奈川県川崎市のアルファメディア社は開放特許の技術を用いて学生の出欠を管理するシステムを開発・販売しています。川崎市といえば、開放特許の草分け的な取り組みをしていることでも知られ、大企業の開放特許を中小企業が活用するモデルを川崎モデルと呼ぶこともあります。
アルファメディア社が提供する学生出席管理システム「かいけつ出席」は、大学や専門学校での学生の出席管理を目的とした製品です。学生証をICカードリーダーにかざすことで出席管理を行うことができるものです。従来製品との違いは、ICカードリーダーを教室に常設設置することなく持ち運び可能なものとしたことで、設置作業が少なくなり簡易で安価に導入するようにしたことです。
今では50大学に導入するほどの人気の製品です。
同社が開放特許を利用したのは5年前。富士通社の「代返防止機能」の特許を活用しようと考えたそうです。
代返防止機能は、学生証と机に貼られたRFIDタグを1対1で対応させるもので、1つの座席につき1人の出席登録のみが可能となります。そのため、1人の学生が他の学生の出席登録を行う「代返」を防止するという仕組みです。
同社従来の「かいけつ出席」で検知できなかった代返の問題を、その開放特許の技術を用いて解決しました。
富士通社の開放特許技術を導入したことで、取引大学は以前の6から現在の50、10倍近くに増えているそうです。取引が増えた理由の1つに開放特許の存在があったと小湊宏之社長は話します。
開放特許を使ったことでメディアなどで事例を紹介されることが増えて話題性が増し、これによって製品の認知度のアップ、製品に興味を持ってもらえることに繋がったそうです。
実は同製品の販売実績としては、開放特許技術による代返防止機能付のものより、その機能のないバージョンのものの方が依然多いのだそうです。しかしながら、その販売のきっかけも開放特許を活用したことで多方面で紹介されたことから多くのユーザーに関心をもってもらったことが寄与しているようです。
「かいけつ出席」は発売当初は知名度がなく、販売が伸び悩んでいたそうです。知名度を上げるために、ラインナップを増やしたり、新しい技術を取り入れるたりすることを考えたそうで、その条件を満たしたのが開放特許の活用でした。
小湊社長は、開放特許を活用した製品つくりを行ってみて、知的財産権が身近になったといいます。新しい製品づくりをするときに付加価値を高めることは必要です。その中で、自社で開発できるか、自社で開発をしない場合には開放特許はないか、と探しているのだそう。いま現在も、新たに開発している製品にも開放特許を入れることを考えているそうです。一度成功したことで心理的なハードルも下がり、他社の知的財産権の活用も身近に感じられると話していました。
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