自社技術と知的財産権を有効活用することにより、大企業が参入しにくい市場で売上げを伸ばしている企業に東海理研株式会社(岐阜県)があります。

中心技術は板金加工

東海理研株式会社は、精密板金加工による金属製品の製造を行う会社として1968年に設立され、郵政市場への参入によって順調に業績を伸ばしてきました。その後は、郵政商品頼りからの脱却を図るために、自社商品の開発を進めてきました。
その中、顧客から「限られたスペースで多数のポスターを掲示できないか」という要望があり、これに応えて開発したのが循環式ポスター掲示機「くるくるポスター」(1978年発売)です。


循環式ポスター掲示機「くるくるポスター」

セキュリティ分野へも展開

「くるくるポスター」で得たコネクションから「百貨店などの大型店舗では、つり銭準備金の受け渡しに苦労している」と聞きつけ、つり銭準備金の受け渡しを無人でスムーズにできる「特殊保管物ロッカー」をユーザーとともに開発し、1996年から販売しています。


特殊保管物ロッカー

この「特殊保管物ロッカー」の開発をきっかけに、佐藤明広氏(同社社長、当時は専務)が「これからの時代は、セキュリティを必要とする物品の管理が重要視される」と時代の流れを読み、ITを使ったセキュリティ分野への進出を決定しました。セキュリティに関する技術開発は、自社で行うとともに大学等の研究機関とも共同で行っています。そして、2003年にネットワークセキュリティシステム「アクセスウォール」を商品化して販売しました。

セキュリティ分野での売上げは順調に伸び、新たなセキュリティ商品の開発も進んで、現在の主力商品である「デジタル@ICキーシリーズ」が商品化されました。

デジタル@ICキーシリーズでは、いつ、誰が、保管庫などを開閉したかを、パソコンで一元管理できるようになっています。このデジタル@ICキーシリーズの基本技術については特許を取得しています。特許取得の際には、早期審査制度を積極的に利用して早期権利化を図ったそうです。
また、精密板金加工を本筋とする同社の技術の活用として、取り付ける保管庫などの箱については、ユーザーのニーズに合わせたものを製作しています。精密板金加工の技術、セキュリティ分野での実績、特許権の取得と、それまでに積み上げたものによって取り付けから運用まで含めて、ユーザーのニーズにあったデジタル@ICキーシリーズを提供できること、これが東海理研株式会社の強みとなって他社の参入を防ぎ、ニッチな市場で売上を伸ばしています。

デジタル@ICキーシリーズの開発中には、郵政民営化によって郵政商品の売り上げが激減したこともありましたが、前述したように他商品も意欲的に開発していたこともあって、同社は、売上激減という危機を乗り越えることができました。
いまでは、郵政商品に代わってデジタル@ICキーシリーズなどのセキュリティ商品が事業の柱になろうとしているそうです。


デジタル@ICキーターミナル

先の読めない環境の今だからこそ、従来の自社技術と新たな技術を組み合わせてニッチな市場の狙ってみてはいかがでしょう?その際には東海理研株式会社のように自社開発した技術の特許を取得することも戦略ですし、他社が眠らせている休眠特許を借り受けて導入するという手段もあります。

東海理研株式会社

企業名
東海理研株式会社
所在地
〒501-2698 岐阜県関市武芸川町谷口599
Tel
0575-46-1111
Fax
0575-46-2627
Web
http://www.tokairiken.co.jp
富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)