今回は汚泥の脱水乾燥装置における新技術で特許を取得した株式会社アイサク(愛知県豊田市)の代表取締役 須藤昭一氏にお話しを伺いました。
この特許技術は、世界の汚泥処理分野、ひいては環境分野に一石を投じるものになるのではないかと期待しているそうです。

世界を悩ませる汚泥処理問題

開発したのは、汚泥の脱水乾燥装置という生産設備。汚泥は、下水処理場や土木建設現場はもちろん、食品工場、電機工場など様々なところから生ずるもので、その処理は今や世界的な社会問題になっています。
従来の技術では発生した汚泥の含水率を約80%の量までにしか減量できず、処理に莫大なコストがかかっていました。
しかし、脱水促進剤と汚泥を混ぜながら風を当てて乾燥させる新技術により、約20%以下にまで含水率を落とすことに成功したのです。
臭いが強くドロドロした汚泥が、この機械を通すことで、直径1cmほどのサラサラした炭のようなものに生まれ変わります。もちろん、臭いも格段に抑えられます。さらに、含水率が20%以下になると燃料としての再利用も可能。環境に優しく、処理にかかるコストも削減できるようになったのです。

特許の確保戦略

この新技術の発明について、日本での特許権取得だけではなく、国際特許出願をすることで海外での権利化も図っています。汚泥処理は日本だけで起こっている問題ではなく、海外どこにいっても存在する環境問題だからです。海外展開の礎としての権利確保に戦略的に取り組んでいます。

国際特許出願の際には外国出願補助制度を活用して、費用のほぼ半分に抑えることにも成功しました。

技術開発の背景

汚泥の脱水乾燥装置の開発を機に環境分野に参入しました同社ですが、実は主な事業は自動車の製造に使われるプレスや自動化装置の生産。昭和38年の法人設立から地元の自動車会社に生産設備を納める工場として創立されました。とてもニッチな分野ですが、取引先の拡張に努めてきたため、国内の全ての自動車メーカーに、更には世界の有力自動車メーカーへの納入実績があります。

転機となったのが、リーマン・ショック。この先会社を継続させるためには、既存の顧客だけでなく、もっと広い視野を持ち、自分たちの強みを活かして商品の幅を広げなければならないと感じられたそうです。
その時期に、先に開発されていた脱水促進剤を汚泥に混練し、乾燥する設備を作ることになったのです。全く新しい分野への挑戦でした。特定分野の企業に受注生産で機械を納める従来のビジネスと異なり、ターゲットは社会全体。「人類・社会の課題解決」にも軸足を持てるところに魅力を感じて取り組まれました。

汚泥の脱水乾燥装置の技術については、現在は製品としての磨きをかけている段階に入っているそうです。処理時間の短縮や、処理容量の拡張、耐久性の向上など、製品価値を高めるためのさらなる開発を進めています。今後は、「学」との連携によって開発の速度を上げ、海外の知的財産もしっかり確保していきます。
須藤氏は、汚泥の脱水乾燥装置を世界中で売れる製品にして、地球規模で環境問題を解決していきたいとお話されていました。



富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)