ハードウェアスタートアップの現状と課題

近年、3Dプリンターなどの新たな製作テクノロジーやクラウドファンディングなどの資金調達の多様化により、モノづくりに参入しやすい環境が形成されています。
これを受けて、個人やベンチャー企業がモノづくりに参入する潮流「メイカーズムーブメント」が起きています。

一方で、モノ自体は製作でき、資金も調達できたが、量産化が上手くいかないといったケースも多々あるようです。中には、大幅な出荷遅延や事業頓挫を起こしている事業者もいるそうです。
今回は、はじめてモノづくりに挑戦する企業や個人の方に気をつけていただきたいポイントを紹介したいと思います。

モノづくりの工程は500以上

はじめて商品を量産する方が失敗する1つの要因に、工程の多さを知らなかったということがあります。単に「モノを作る」といっても材料加工、成形、組み立て、品質管理など様々な工程を経ます。量産では、1箇所ですべての工程が賄われるということはなく、細分化された場所が各工程を担います。
大企業ですと全工程を自社工場内に構えるケースもなくはありませんが、スタートアップではそうはいきません。そうなると、自身のもつネットワークから、各工程に必要な企業・工場・専門家を各工程にマッチングしていく必要があります。自身が考える商品の量産計画にあったチームを組み上げていかなければなりません。
量産および必要なら販売までを含めて各工程に必要なリソースやノウハウを把握し、適切な協力者を見つけて、総合的なプロジェクトとして量産化を進めます。

必要な試験や認証を考慮

製品の量産では品質も重要です。試作や資金調達の段階では、アイデアやデザインの優秀さが品質と捉えられがちですが、製作の段階では仕様や規格に沿ったものとなっていることが品質です。
品質を保証するものとして試験や認証を受けられるもの・受けなければならないものがあります。製品のアイデアが浮かんでクラウドファンディングに成功したのはいいが、必要な認証取得にまで頭が回っていなかったということはよく聞きます。
アイデアを形にしやすい状況にはなった現代ですが、ビジネスとして成功させるモノづくりに至るには、アイデアを形にするだけでなく、量産や認証または販売に至るまで、幅広く考える必要があります。

忘れてはならない知的財産権

はじめてモノづくりに取り組む方が見落とすこともある知的財産権の取得も大事なポイントです。
せっかくのアイデアも他人に真似されたら、より安く、より良いものを作られてしまうかもしれません。
技術面を特許権実用新案権、デザインを意匠権で保護できないか、必ず検討しましょう。もっとも注意が必要なのはこれらの権利は世に知られる前に出願しなければならない点です。発表・販売した後に「やっぱり」と思って出願しても一部の例外を除いて権利を取得することができません。製品の企画段階で権利取得を検討するようにしましょう。
また、技術やデザインで権利を取れなくても商標権で保護することも考えられます。商標とは端的には「名称」や「ロゴ」と言われるものです。製品にピッタリの名前を商標登録しておけば、他人はその名前を真似することはできなくなります。

知的財産戦略も含めて総合的に量産や販売を成し遂げることも「モノづくり」を始めるにあたって必要なことです。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)