コラム
Column
先頃、大手キュレーションサービスのNAVERまとめが著作権管理システム「Lisah(リサ)」を試験導入したことを発表しました。
画像の登録だけでAIが不正利用を検知–「NAVERまとめ」が著作権管理システムを導入 – CNET Japan
NAVERまとめといえば、ユーザーが関心のあるテーマに沿った情報を引用・集約して「まとめ」を作成できる「キュレーション」と呼ばれるサービスプラットフォームとして日本での最大手です。
このようにまとめられた情報は閲覧者からしても多くのWebサイトを巡ることなく関心事を読めるので、大変人気のあるサービスです。
一方で、「まとめ」を作成するユーザーは自ら記事を書くことはほとんどなく、他のWebサイトやSNSの投稿を「引用」することを前提としています。これまでにもこの「引用」が度々問題視されてきました。ただのコピペ(転載)なのか、正当な引用なのか、判断が難しいところではありますが、元の記事や写真を作成した著作権者からすれば、無断転載と考えられるものも多くあったようです。
なお、著作権法の解釈上、「引用」といえるには「明瞭区分性」と「主従関係性」が必要とされています。明瞭区分性とは引用部分とそれ以外の部分が明確に区別できることをいいます。主従関係性とは、引用する文章等が主(メイン)であって、引用される部分は全体の中の従(サブ)であることをいいます。そう考えると、大したコメントもつけずに他Webサイトの記事や写真を貼り付けている記事については、主従関係性に疑問があり、引用の要件を満たさないような気もしてきます。
これまでも、同サイトに関する著作権侵害の申し立ての枠組みはあったようです。
しかしながら、それは著作権者が侵害していると考えるまとめを発見し、それに関して証拠(自身の著作物である証明)等を提出し、非表示化などを請求する必要がありました。たまたま見つけた1件に対応するならそれでもよいですが、定期的に監視したり、見つけるたびに手続をしたりするのは、とても負担になります。
今回導入される Lisah では、予め著作権者が著作物(画像)を登録しておけば、著作権侵害の疑いを自動的に監視し、発見した場合には簡単な手続きで非表示化や出典表示追加などができるようになるそうです。
しかも侵害の監視にはAI(人工知能)技術が利用されるということで、多少加工したものについても検出ができそうです。
こうしたAIを活用する著作権侵害の監視システムは国内外でいくつも研究・開発されています。
Webが発達して著作物の複製が容易になっていますので、こうしたシステムのニーズは多くありそうです。
著作権は知的財産権の一種とされています。知的財産権には他にも技術を保護する特許権・実用新案権、デザインを保護する意匠権、商標(名称やロゴなど)を保護する商標権などがあります。
これらの権利についても権利者の実務上は権利侵害の監視が行われます。将来的にはこれらの権利の侵害を監視するようなAIシステムも登場してくるかもしれません。昨今のAIブームを考えると既に実用レベルで研究開発がなされているかもしれませんね。
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