特許を借りる?

ケイアンドエフ・オフィス(東京都)は、CD・DVDのコピーをメインとする企業です。そこに、服飾雑貨を扱っていた菊池氏が取締役として加入したことでスクールバッグを提供する事業も始めました。
新規事業、投入する商品は他社との差別化が必要であると考えたところ、その方法の1つとして「特許を借りる」ということを選択されました。特許技術は独占技術です。他社が容易に真似できないという点での差別化を図ることができます。また、「借りる」ということは他人の特許権について実施許諾を受けるということで、新規に開発して特許を取得するよりも確実性があり時間や費用などのコストを抑制できます。

課題を解決できる特許を見つける

スクールバッグは、学校に導入してもらうことを前提として企画します。導入の決め手は生徒・教員・保護者の3者の課題を考えることが必要とのことです。

学校視点の課題
通常の手提げバックを背中に背負うイレギュラーなスタイルに不評がある
保護者視点の課題
耐久性と価格
生徒視点の課題
デザイン性と使いやすさ

課題を見つけ、解決できるものとしていくつかの特許技術を採用し、商品に活用しています。採用した特許技術の1つが当サイトで以前に紹介したCOAROO(コアルー)ベルトです。ベルト一本で、ショルダーやリュック、前掛けスタイルなど、用途に合わせた5通りのスタイルに変身する鞄ヒモです。

生徒それぞれに合った使い方をフレキシブルな鞄ヒモが実現することで使い勝手が向上し、イレギュラーな使い方でない分、耐久性も向上します。ひいては、使用する生徒の身体負担の軽減にもなるとの判断から採用されました。

特許技術を取り入れた商品では、自社商品の独自性と商品開発のポリシーを対外的にアピールすることができ、また寄せられた課題に対して直接応えられることでも信用を得て、企業価値を上げられたと考えているとのことです。
結果として、生徒の健康や通学時のマナー向上などをデザイン選定時に考慮している学校には対して響く商品が完成したそうです。

特許権者との協力関係が必要

利用された特許との出会いはインターネット。それまでスクールバッグについて抱えていた課題を解決できる技術と考えて、即日、特許権者に連絡をとったそうです。
特許権の実施許諾だけでなく、商品開発を進めていくにはその技術に関する経験やノウハウを持つ特許権者の協力が重要だとおっしゃいます。実施許諾を受けたとしても商品が完成するまではチャレンジングです。売れるかわからない状態で特許使用料を求められると二の足を踏むところだと言います。今回は、特許権者の積極的な協力を得ることができ、二人三脚で商品開発を推進できたのだそうです。

現在では学校向け以外にも福祉業界やその他の企業向けにもバッグを手掛けているそうです。

特許を貸す側にも商品がヒットすることでメリットがあります。それは特許使用料を得られることです。しかしながら、前述したように商品がヒットしなければ特許使用料を得ることも難しいでしょう。
特許を貸す側、特許を借りる側が、互いに譲るところは譲って、譲れないところは譲らない。協力できるところは協力する。最終的に商品がヒットするように、ちょうどよいところを模索する営業力も特許を貸す側には必要な観点ではないでしょうか。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)