コラム
Column
Little Pianist(リトルピアニスト)は、倉知真由美氏が発明したピアノ用シューズの商品名であり登録商標です。
この本シューズは、次の写真にあるように、一般のシューズよりかかと部分がつま先側にずれています。このほんの少しずらした特徴によってこのシューズは特許となっています。かかとのズレによるテコの原理のような作用によって、ペダルを離す操作の際の足への負担が軽減されます。このことによって、力の弱い子どもでもピアノのペダル操作がしやすくなり、より上手くピアノを弾けるようになります。
かかとに特徴のあるリトルピアニスト
左: リトルピアニスト代表 倉知真由美氏, 右: 発明plus代表 富澤
発明のきっかけは、娘がピアノを弾く際にペダルが滑っていることに気づいたことなのだそうです。
ピアノのペダルは大人でも踏み辛いことがあり、子どもならなおさら苦労しているようです。ピアノ演奏に慣れている先生や演奏家の方でも「ピアノのペダルは踏み辛いのが当たり前」と考える方もいらっしゃるそうです。
その当たり前という点に疑問を持てたことが、この発明の始まりであり、ヒット商品を生む鍵になったのです。
ピアノのペダルを踏みやすくという課題について、当初はかかとを丸くすることを考えたそうです。そして、かかとを丸くするというアイデアについて特許を取ろうと考えて弁理士に相談したところ、特許取得のために試作品を作るなどして、かかとの高さや丸みなどを具体化してほしいと言われたそうです。特許出願では明細書に発明を実施(製造等)できる程度に具体的にアイデアを書き表し、特許請求の範囲にもどの構成や条件なら効果が得られるのかを過不足なく定義する必要があります。
それから、倉知氏は木片と上履きを大量に買い込んで試作を行いました。試作を続けていく中、たまたまかかとのズレた試作品を娘が履いたときにペダルを踏みやすくなることを発見し、この発明は完成しました。
かかとの形状をさまざまにする試作を行った
倉知氏は前述したとおりリトルピアニストについて特許を取得されています。
製品について特許をもっていることで、取引をする企業の対応も違ってくると感じるそうです。販売や製造を委託するケースでは、特許という強い権利をもっていることで、こちらの意見も尊重してもらえ、交渉などでもアドバンテージを得られるということがあるようです。もちろん特許があるということで、技術の信頼性や、宣伝効果なども考えられます。
試作から製造委託、販売委託と多くの苦労をして完成した商品ですから、自身の主導で展開できるビジネス戦略をとりたいものです。
ちなみに、倉知氏は四苦八苦しながら試作品を作っている姿を動画で公開し、これが拡散されたことで、テレビなどで紹介されたそうです。これがきっかけとなって大型楽器店や百貨店からも引き合いを受けるようになり、商品が広まりました。
ピアノシューズ専門店「Little Pianist」
https://littlepianist.jp/
デザインが生まれたら 商品を開発したときに特許権の取得を考えることがあるかと思います。しかし、実は商品を守る知…続きを読む
特許の使用料の考え方 特許権を取得した人がその使用料でお金持ちになったという夢のような話を聞くことがあります。…続きを読む
流行りのM&A 「サラリーマンは300万円で会社を買いなさい」(講談社+α新書)という個人M&Aを薦める本があ…続きを読む
物語は魅力的 スポーツ選手が怪我から復帰してオリンピックでメダルを取る、というような復活劇は多くの人を感動させ…続きを読む
プライベートブランド 昨今、コンビニエンスストアでも大手スーパーでも見るのがプライベートブランド(PB)です。…続きを読む