震災をきっかけに広がった支援の流れ

クラウドファンディングは、企画したプロジェクトをウェブ上に掲載し、不特定多数の人からそれぞれ少額の支援を募り、一定の資金調達に成功したらそのプロジェクトを実行する仕組みです。寄付型、購入型、投資型などのタイプがあります。

日本におけるクラウドファンディングは、東日本大震災以降急速に発展・普及したといわれます。復興支援として「募金」で単にお金を集めるのではなく、防災に役立つ「モノ」や復興支援につながる「コト」をウェブ上でプロジェクトとして発表し、共感者を募ってそのプロジェクトを実行してきた、という経緯があります。酒蔵の復旧プロジェクトでは「日本酒」を、水産加工業者の復旧プロジェクトでは「海産物」や「缶詰」をリターンに設定し、情報を発信することで資金を調達しました。

クラウドファンディングで世に送り出そうとする「モノ」や「サービス」は、全く世にない新しいもの。プロジェクトをウェブ上に公開することは、アイディアやノウハウが盗まれてしまうリスクを伴います。また、開発を進めたい商品・サービスについて、すでに第三者が特許や商標を取得していたというケースも十分に想定できます。後悔(=公開)先立たずにならないように、プロジェクトの公開前に知的財産権の対策を進めることが大切です。

災害グッズの実現化

クラウドファンディングにより資金調達に成功した防災グッズを2点紹介します。

1つ目は、ロケットストーブといわれる簡易型の薪ストーブです。

被災地で一斗缶と煙突を組み合わせたり、レンガを積み上げたりして簡易のかまどを作り、調理・暖房に役立ったDIYのアイディアをベースに、防災用品として商品化を目指すプロジェクトです。個人の発明家がファンド開始前に特許・商標の出願を行い、ファンド達成後にその資金をもとに設計図を鉄工所へ持ち込み、商品化しました。

2つ目は、防災ホイッスルです。

阪神・淡路大震災から20年目となる節目の年に、クラウドファンディングで投資を募集しました。これはがれきの中で埋もれていてもホイッスルがあれば救助を求めることができるというコンセプトのもとに個人の発明家が腕時計の様に装着することができるよう設計されたホイッスルを商品化したいというプロジェクトです。

プロジェクトの公開前に意匠登録出願を行うことで知的財産権を確かなものにした上で、クラウドファンディングの目標達成後にその資金で金型を製作から量産化まで成功させました。

この2つのプロジェクトはいずれも「購入型」と呼ばれる手法で、出資者に対し完成した商品を提供する約束することで、新商品を開発するために必要な資金を調達しました。防災用品のように、日々使うことが想定されたものではなく「あったらいいな」というモノは、なかなかテストマーケティングを実施することは難しいのが現実。クラウドファンディングという形でニーズやウオンツを探りつつ、資金調達を兼ねて商品開発を進めることは、大変合理的な取り組みと言えるでしょう。

坂野明日香

主に補助金・クラウドファンディングの話題を担当。
ガジェットなど新しいモノや家電好き。鉄分が豊富(特にSL)。
某法科大学院を卒業して司法書士事務所へ就職、出産を経て、前職の特許事務所へ。
7年目を節目にコスモス国際特許商標事務所へ転職。