第196回通常国会で改正著作権法が成立しました。
今回の改正では著作物の教育利用の拡大や、著作権の例外的利用の範囲拡大などが盛り込まれています。その中で私が注目しているのは「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない」利用です(改正著作権法30条の4)。
これはAI(人工知能)などの技術で著作物を分析的に利用できるようにするために設けられた規定です。

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著作権法では、いくつかの例外規定が設けられており、それらに該当する場合には、原則、著作権の存在に関わらず、その著作物を利用できるとされています。
これまでも、一定の技術開発に関しては著作物の利用が認められていましたが、「著作物の利用に係る技術開発」に限られ、情報分析などに利用できるのかが曖昧でした。それが、今回の改正では「著作物に表現された思想又は感情を享受」することを目的としなければ(著作権者の利益を不当に害しない限り)技術開発に利用できることとなったのです。

AI 開発では、コンピューターに数多くの教師データを与えて学習をさせることで知識や能力を獲得させます。そのため、教師データとなる情報の質や量が重要となります。
今回の著作権法改正によって、AI 開発に教師データとして利用できる著作物の範囲が広がれば、より時代にマッチした高度な AI を作り出すことが可能になるでしょう。

今国会では弁理士法も改正され、弁理士の業務にデータの利活用なども加えられました。データは場合によっては著作物に該当せず、知的財産としての保護を受けにくい特徴があります。それでありながら、AI 技術の発達とともにデータの重要性が増す背景から、その保護を知的財産の専門家たる我々弁理士が担うことになりました。これも国が情報技術の発達を重視している表れかと思われます。

AI に限らず、情報検索や情報分析など、IT 分野のさまざまなところで著作物やデータの活用が広まることが期待されます。これによって私たちの文化や生活を向上させるようなプロダクトやサーヴィスが誕生することでしょう。

後藤 英斗

弁理士、情報処理安全確保支援士(登録セキュリティスペシャリスト)
発明plusでは外部ライターとして主にIT系の記事を担当しています。日曜プログラマーとして、AI・機械学習・自然言語処理などで遊ぶ。