きっかけはちょっとしたこと

「国際 文具・紙製品展」という文具業界関係者向けでは最大級の展示会が毎年7月に開催されます。会場内にて日本文具大賞という機能面・デザイン面それぞれにおいて、その年のもっとも優れた文具に贈られるアワードの発表があります。
一昨年にデザイン部門で見事グランプリに輝いた商品は、ひとりベンチャー文具メーカーの株式会社あたぼうが作る「飾り原稿用紙 碧翡翠」でした。代表の佐川博樹氏は経営コンサルタントとしても手腕を振るわれる中で、文具メーカーとなるきっかけになった元々の商品について「スライド手帳は自分が工夫して使っているものを売ってみて、世に問うてみたかった」と話されていました。また、受賞した商品は、デザイナーやライターの方々との繋がりがあったからこそとのことです。ひとりで全てを行うと言っても協力者の存在は非常に重要な要因となり、開発を進めるに当たって早い段階から専門家などの意見を取り入れることが重要です。

流通させる時の苦労

せっかく作った商品だからこそ、大手の販売店で取り扱ってもらうなどで効率的に初期投資を回収したいという思いが生じます。しかし、メーカーとしてのこだわりがあまりにも強すぎると商品が一人歩きしようとした時に使い方が理解されるだろうか、売れるだろうかとバイヤーなどが敬遠することがあります。思い余って作ってしまうと流通させる時にこのような壁が生じます。
もし気に入ってもらえたとしても、ビジネスである以上は流通の際に切り離せない問題として取引条件をクリアすることということがあります。定価が見た目や同種の商品に比べても受け入れられるものであるかどうか、原価率の設定が流通させる時に自社の利益だけでなく、ベンダー企業や販売店の利益が残るような条件になっているかどうかというのは企画の段階で考えなければならないので、売り場に並ぶことをしっかりと想定してアドバイスしてくれる先駆者を探して相談することは必ず行う必要があります。同じような立場で成功させている人は身近なところにいますので、親身に相談に乗ってくれるはずです。

身の丈にあった成長を描く

趣味で自分だけが使うようなものを作るのであれば問題ありませんが、せっかく費用をかけて作った商品が売れなくては意味がありません。ギャンブルのようにならないよう、身の丈にあったチャレンジを行うことが必要です。
そのためには小ロットでの生産が可能か、製造から納品までのリードタイムがどの程度必要か、そのために回す資金がちゃんと確保できているかなどの事前の確認が必要です。商品が動き始めるとファンがつきます。そのファンのためにもしっかりと供給できる体制を整えておくことが大切です。

NEXT switch株式会社 代表取締役 文具営業専門家
■経歴
文具営業・開発コンサルタント。
1976年大阪生まれ。名古屋商科大学大学院マネジメント研究科修了 MBA(経営学修士)。
物心がついた時からマジックインキ®などの筆記具やクレヨンなどの画材をはじめとした様々な文具に囲まれて育った。大学卒業後都市ガス会社のシステム部門へ就職し、2006年に祖父が創業した老舗筆記具メーカーに転職。営業、経営企画を経て2014年9月に独立し現職。「ベンチャー文具メーカー」を支援するための独自のビジネスモデルを実践。文具業界だけでなく多方面への人脈なども活用し「文具営業専門家」、文具道師範代として文具通販「文具道」の運営に携わる。
■専門分野
文具業界におけるビジネスマッチング、メーカーの営業支援・開発支援。卸、販売店の活性化。