弁理士の安田です。

先日、短答試験の合格発表がありました。近年、合格者数が減少傾向にあるため、残念な結果に終わってしまった方も多いのかもしれません。来年に向けた勉強をなかなか始める気分にならないかもしれませんが、ダラダラしてしまうと勉強を再開するタイミングも掴みづらくなってしまいます。なるべく早く勉強を再開しましょう。

しかし、なんとなく勉強を繰り返すだけでは、来年も同じ結果になってしまうかもしれません。どのような勉強方法を取るかも重要ですが、今回は、まず勉強するに当たってどんな心構えを持つべきか、私の考えをお伝えしようと思います。

キーワードは「言わない」「酔わない」「揺るがない」

これらは、私が受験生であった間、ずっと心の中に掲げていた言葉です。

どちらかと言うと怠け者の私が弁理士試験に合格することができたのは、これらの言葉を念頭に置いていたからだと思っています。それぞれの言葉の真意を説明していきましょう。

photo by PIXTA

言わない

学習参考書を買っただけでなんだか勉強した気になってしまい、肝心の勉強をしない。そんな経験はありませんか?

弁理士試験受験生が弁理士を目指していることを人に言うと、似たような現象が起こります。つまり、弁理士を目指していると人に言うだけで、なんだか合格に近づいた気分になってしまい、肝心の勉強がおろそかになってしまうのです。
弁理士を目指していることできるだけ人に言わないようにし、勉強に集中しましょう。

調べてみるとこのような現象についてしっかり実験を行っている人がいました。アメリカの心理学者、ペーター・ゴルヴィツァーです。
実験とは、ある作業をさせる集団に対して各個人に目標を決めさせ、目標を宣言させるグループと、宣言させないグループとに分けて、全員に45分間でその目標に向かって作業をさせるというものです。

すると、目標を宣言しないグループでは、全員が45分全てを使い切るまで作業を行った上で「目標の実現まではまだ遠いと感じる」と述べたのに対し、目標を宣言したグループの人間は平均33分過ぎたところで作業をやめてしまい「目標にずいぶん近づいた気がする」と述べた、という結果が得られたそうです。

これを弁理士試験に当てはめると「弁理士になる」という目標を宣言した人は、宣言していない人よりも勉強時間が短いにも関わらず「弁理士である自分」にずいぶん近づいたように感じてしまうことになります。
なんて恐ろしい

合格のためには、弁理士を目指していることをあえて言わない方が良いのかもしれません。

私は弁理士試験受験生であったときには、弁理士を目指していることを職場の同僚に言っていませんでした。
それに加えて、勉強を始めてから合格するまではできるだけ会社の飲み会は参加しないようにしていましたので、どうしても付き合いが悪い人というイメージが付きまとっていました。そう思われるのは本当に心苦しいことです。
試験勉強していることを言っていれば理解は得られたでしょうが、弁理士になるためです。覚悟を決めて諦めます。
合格して同僚をアッと言わせれば良いのです。

酔わない

働きながら難関国家試験の勉強している自分は人と違っていてすごい!というように思っていませんか?

正直に言いますと、私も受験生であった時は少しそう思っていました。実際、「自分ってすごい」と言い聞かせることで自信に繋がる可能性もありますので、これを否定しようとは思いません。また、仕事をしながら勉強を続けるというのは体力のいることですし、睡眠時間を削りながら勉強をしていると精神的にもまいってきますので、「自分ってすごい」と思っていないとやっていられない部分もあります。
しかし、そんなすごい自分に酔わないようにしましょう。

酔ってしまうと、仕事で忙しい中で勉強を続ける自分が悲劇の主人公のような気分になり、受験生である自分から抜け出せなくなってしまうおそれがあります。それでは、合格には近づきません。
「自分ってすごい」と思うのは一向に構いませんが、合格しなければ「ただちょっと知財法に詳しい人」で終わる可能性があると危機感を持つべきです。その危機感があれば、勉強をしなければならないという思いに自然と繋がってくるものと思います。

酔うなら合格してから酔いましょう。

私は弁理士登録してからというもの、毎朝弁理士徽章を付けたジャケットを着て、姿見の前で無意味に佇みウットリしています。そんな傍から見れば恥ずかしいようなことも、弁理士になってしまえばやりたい放題です!

揺るがない

「机に向かっていてもすぐにスマホでネットやゲームをしてしまう。勉強が続かない。」という経験があるのではないかと思います。
勉強が続かないのは意志が弱いからでしょうか?

違います。弁理士になりたいという気持ちよりも、ネットやゲームをしたいという気持ちの方が勝ってしまっているだけです。弁理士になりたければこの誘惑に打ち勝てるよう「弁理士になる!」という揺るがない意思を持ちましょう。

みなさんは「引き寄せの法則」という本をご存じでしょうか?自分にとって最高の未来を強く思い描くと、その未来が引き寄せられてくる!というようなことを熱心に語っている本です。
なんだかちょっと怪しげですが(実際、波動だなんだと怪しさ爆発な部分もありますが)、これがけっこう馬鹿にできない部分もあるのです。例えば、意志が弱くて何事も続かないと感じている人に向けて、以下のようなことが書かれています。

本当はしたくないのに意志のせいにしていることが問題です。「したいのだ」とあなたはいうでしょう。しかし、冷静に自分を見つめれば、本当は別のことをしたがっているのです。実現するための代価を払いたくないのです。

なんだか少し耳に痛いというか、思い当たる感じがしませんか?
弁理士試験は難関試験であるがゆえに、合格するためには趣味はもちろん、家族との時間も制限しなければならないという代価が必要です。しかし、その代価を払いたくないために、勉強がおろそかになりがちです。

これを克服するにはどうすれば良いか。その本にはこう書かれています。

強い意志は強い願いの後に続くのです。

弁理士になりたい!という揺るがない気持ちがあれば、当人が意志を働かせようとするまでもなく、自然と強い意志を持って勉強するようになるということです。意志を働かせようとする必要がないという点では、揺るがない気持ちがあれば、自然と弁理士になるために必要なことするようになる、というニュアンスの方が正しいかもしれません。

とはいえ、誘惑の多い世の中です。私も勉強中にスマホをいじることもしばしばでした。しかし、スマホの壁紙を弁理士徽章の写真にしたり、部屋に「弁理士試験合格!」と書いた紙を張り付けて音読したりするなど、なるべく「弁理士になる!」という思いを奮い立たせるように心がけていました。単に頭の中で願うだけでなく、視覚的、聴覚的な刺激を自分に与えることも効果的であるように思います。

最後に

少々偉そうに書いてしまいましたが、当然ながら私も全て完璧に徹底していたわけではありません。試験勉強を続けていると、体力的・精神的にも疲労が溜まってきますので、適度な息抜きが必要だと思います。

また、どんなに心構えが素晴らしくても、やはり家族の理解や協力なくしてはなかなか合格に辿り着けません。自分ひとりで頑張っているわけではないと、謙虚さや、感謝の気持ちも忘れないように頑張っていきましょう!

参考文献

Derek Sivers : TEDGlobal 2010 “Keep your goal to yourself”
-「引き寄せの法則」(ウィリアム・W・アトキンソン[著] 林陽[訳])

安田 宗丘

弁理士。特許業務法人コスモス特許事務所勤務。

専門分野は機械。某電子部品メーカーでエンジニアとして約13年間勤務。
娘の“アナ雪“好きにつられ「ありのまま」の自分を模索する中、弁理士試験合格を機に特許事務所へ。転職とともに神奈川県民から愛知県民となり、慣れない土地と仕事に日々奮闘中。