曲や音楽CDのタイトルについて、他人が商標登録を持っていた場合にはどうなるでしょう。

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実際にミュージシャンの井上陽水さんが「UNDER THE SUN」というタイトルでアルバムを発表したときに問題が起こりました。実は、このタイトル、商標登録を持っている人がいたのです。そして、その商標権者が井上陽水さんに損害賠償請求をしたという事案です。

確かにアルバムには「UNDER THE SUN」の文字列をそのまま使っています。しかしながら、CDを購入しようとする消費者は、その言葉を音楽CD・アルバムのタイトルであると認識し、決して登録商標を持っている商標権者の商品だと思って購入することはないでしょう。商品の出どころを示す機能として表示されていない以上、商標としての表示ではないとして、この事案では商標権侵害は成立しないとされました。

音楽の他にも本(書籍)でも同じようなことが起こります。

例えば、「POS」という言葉が商標登録されています。この言葉は、Problem Oriented System(問題思考システム)の略語として1968年にアメリカの教育病院で実用化された診療記録の作成方法を意味するものとして登録されています。
これに対して問題となったのは「POS実践マニュアル」という書籍のタイトルについてです。これも、書籍のタイトルも音楽CDのタイトルと同様に、あくまで内容を示したものにすぎず販売元等を示す表示ではないため、商標権の侵害には当たらないと判断されています。

なお、書籍のタイトルについては、一般的には著作権法で保護される著作物にも含まれないとされています。(そのせいか、出版業界ではヒット作が出ると似たようなタイトルで次々に新刊が発行されることがあります。)

音楽でも同様のケースがあります。
音楽では同じタイトルの曲が何曲も存在しています。カラオケボックスに行って、楽曲の検索すると同じタイトルの曲がずらりと並んだこと、ありますよね。余談ですが聞くところによると、同名異曲として多いのが「桜」のようです。
歌詞やメロディーについては著作権で保護されていますから真似をすることができない一方で、曲名については同じタイトルであっても問題なくつけることができるのです。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)