商標権を取得することによって、どんな利点があるのか —-
商標には自他商品識別出所表示品質保証宣伝広告の4つの機能があるとされています。

商標「ランドクルーザー」

トヨタ自動車には、「ランドクルーザー」という悪路に強い4輪駆動の高性能な車種があります。有名なパリダカールラリーなどでも優秀な成績を収める性能のよい車です。この「ランドクルーザー」という名称は、トヨタ自動車によって商標登録されています。すなわち、トヨタ自動車は「ランドクルーザー」という商標の商標権を保有しています。

まず、自動車に「ランドクルーザー」という名称をつけることで、トヨタ自動車はその車が日産やホンダなどの他のメーカーの車ではないと消費者に認識させることができます。これが自他商品識別機能です。商標によってどの事業者が製造・販売する商品かを判別できるようにします。

「ランドクルーザー」は今ではトヨタ自動車の車としてとても有名です。そうすると、メーカーの識別に留まらず、「ランドクルーザー」と聞くだけで消費者は「あ、トヨタ自動車の車だ」と思います。このように、製造販売者の区別だけでなく、そもそも製造販売者を示すことができるような商標の機能を出所表示機能といいます。

上にも述べた通りこの車種は国際的なレースでも優秀な成績をおさめられるほど性能がよいものと知られています。また、長年多くの消費者に選ばれた車種であることも周知の事実です。そんな車種を表す「ランドクルーザー」の名称が付いた車は、それだけで性能のよい=品質のよいものであると消費者は受け取ることでしょう。これが商標の品質保証機能です。
消費者が「ブランド」を商品を選ぶ目安とするのも、この品質保証機能があってこそです。

ある消費者が良い物を他人に進めるにはおそらく商品名を告げることが多いでしょう。テレビや新聞に広告を載せるにも、写真などとともに商品名を大々的に謳います。商品を広げるときの目印となる商標の機能を広告宣伝機能と言います。
型式や商品コードで告げられてもあまり印象に残りませんが、商品を想起できるような名称を用いることでその拡散力を期待できます。

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長年使うから意味がある – 901か911か

4つの主要機能を持つ商標は、長い期間にわたって使用されることでさらに力を付けていくものです。有名なスポーツカーを例にとって考えてみます。

少し前に、ドイツのスポーツカーメーカーのポルシェが、フォルクスワーゲンに買収されたというニュースがありました。歴史をたどるとポルシェとワーゲンは兄弟のような会社です。

フォルクスワーゲンは、もともと第二次世界大戦より前にアドルフ・ヒトラーが車両の設計をしていたフェルディナント・ポルシェ氏に対して国民が一家に一台所有できるような安価な車を設計してほしいと依頼したことが始まりといわれています。「フォルクスワーゲン」の名称がドイツ語で「国民車」を意味するのもそのためです。
そこでポルシェ氏が作り上げたのが、かの有名なビートル(フォルクスワーゲン・タイプ1)です。このビートルは戦後、高性能で格安の車として世界中に広がり販売されました。ビートルのその独特な美しさを見ると、ポルシェ氏はやはり天才だったのかと思います。

話は戻って、フォルクスワーゲンがポルシェを完全子会社化した話ですが、その後はポルシェもフォルクスワーゲンも業績好調のようです。ここで思うのが商標、ブランド力のすごさです。

利益を販売台数で割ると自動車1台あたりの創出利益が計算されます。フォルクスワーゲンは1台約15万円の利益で、これもかなりの高利益だと思いますが、ポルシェは1台自動車が売れると約200万円の利益が創出されるそうです。この約185万円の差は高級車としてのポルシェのブランド価値です。ブランドには見えない付加価値がつきます。ここに、ブランドの信用力を高め付加価値をつけてきたポルシェの戦略が商標(ブランド)の機能を高めたのです。

それからポルシェの商標の話でもう一つ話しておきたいのが、有名な車種、「911」です。
もともとポルシェが開発した車体名は「901」だったようです。しかし、プジョーが真ん中に「0」の入った3ケタの数字を商標として使っていたため、ポルシェ社は901という名称をやめて「911」を使用するようになったそうです。
そのような経緯があったとしても、いまとなっては「911」で十分通用します。ポルシェが911という名称を使い続けた結果、憧れのスポーツカーのブランド「911」が確立されたと言えるでしょう。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)