特許や商標というのは、いわゆるその製品や名称などを独占的に使用できる権利のことです。他社に真似されないように法的に権利を守っている状態です。一般的にはこの権利は自社での使用を想定していますが、他社に使用させる場合もあります。そういった「他社に利用させる」目的のある特許を開放特許といいます。
他社に利用させる側(開放特許を提供する側)としては、ライセンス収入などのメリットが考えられます。一方で、開放特許を利用する側からはどうでしょう?

今回は他社の開放特許を活用して、自社の新製品開発を行う際のメリットをキャッシュフローの観点から説明してみます。

新製品開発

ライセンス契約によって他社の特許技術を活用できれば、自社の技術や設備と組み合わせることで新製品の開発が可能になります。
池井戸潤氏の小説『陸王』(ドラマ化もされました)を題材に紹介しましょう。老舗の足袋製造業者「こはぜ屋」が新製品でランニングシューズを開発する物語です。
こはぜ屋は足袋屋なので、裁縫技術は持っています。しかしながら、ランニングシューズに用いるですがソールのシルクレイという素材を作る技術は持ち合わせていませんでした。そこで他社の特許技術を活用してランニングシューズ「陸王」を生み出しました。

こはぜ屋が自力でシルクレイを開発する場合には… 多くのお金と時間を使ってしまいます。このお金を研究開発費といいます。研究開発にかかる時間は千差万別です1年後に芽が出るのか、10年後にメリットが出るのか…
他社がお金と時間をかけた成果である特許技術を自社製品に活用できるのが開放特許のメリットです。

お金のブロックパズル

ここでは新製品企画で重要となる「お金」、具体的なキャッシュフローを考えてみましょう。お金のブロックパズルで解説します。この解説では西順一郎氏「戦略会計STRACⅡ」のSTRAC表をもとに和仁達也氏が著書「超☆ドンブリ経営のすすめ」で”お金のブロックパズル”として紹介された図をお借りしたいと思います。

例えば、開放特許を活用して開発した新商品を1個100円で売ることにします。

このとき部品の仕入や外部での加工にかかる変動費が50円であったとすると、粗利益は売上高100円-変動費50円の50円となります。(ここでは一般的な製造業の粗利率である50%(原価率50%)に仮定しています。)

次に稼いだ粗利から固定費として40円を支払います。

固定費40円の内訳ですが、労働分配率(粗利益に対して労働者に還元する率)を50%と仮定して人件費25円開放特許の利用に関して支払うライセンス料が売上の5%程度と仮定して5円、その他15円です。

ここまでの話をまとめると、
1個100円の新製品を売る→変動費50円を支払う→粗利益50円を稼ぐ→固定費40円を支払う→利益10円を獲得する
というお金の流れが見えてきます。

実際には税金などの話もありますが、ここまでに説明した売上から利益までの考え方は開放特許を活用した新製品による収益について一つの目安となるでしょう。

シェアの時代

最近ではよく耳にするようになったシェアハウスカーシェアリングのように、知的財産権もシェアすることができます。何より、前述したように開放特許を利用することで自社での研究開発費や時間の削減にもつながります。

特許や商標そのものはキャッシュを生み出すものではありません。開放特許を介して他社の技術を自社の技術に取り込んで付加価値の高い新製品を生み出すことができれば、新しいキャッシュポイントを生み出すことが可能になります。製品や技術が確立できれば、人件費を既存の事業の配置換え等によって抑えるなど、製品を製造するフェーズを工夫することも可能です。

畑中 外茂栄

保有資格:公認会計士/税理士/キャッシュフローコーチ
社長のモヤモヤしている想いを言語化し、
会社を防衛するための財務戦略を社外No2のポジションで実践するパートナーとして活動している。
得意分野は社長が真にやりたいことや将来のビジョンを明確にした上での財務戦略立案。
お金の出入りを見える化した予算実績管理、銀行との融資交渉、資金繰り対策を行っている。
「お金の悩みを1枚の図で一気に解決する!経営数字のワークショップ」や「知識0からOK!ビジネスを加速させる決算書の見方」、「会社の財務体質を強くする!正しい節税の考え方」などを定期的に開催している。
https://sun-tax.or.jp/