弁理士の安田です。
先日、Twitterやニュースでアメリカの電気自動車企業テスラ(Tesla)の正しい発音は「テラ」である、との情報がありました。他にも社名の読み方といえば、台湾の情報機器メーカーASUSも多くのユーザーが「アスース」や「エイサス」などと読んでいたところにメーカーから「エイスース」と公式発表されたことがありました。社名や商品名の「読み方」だけとっても、なにかと興味を誘います。

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我々弁理士が取り扱う商標の世界において、商標を何と読むか(「称呼」と言います)は非常に重要です。商標は、称呼・外観(商標の見た目)・観念(商標が何をイメージさせるか)の3つの視点によって、他の商標等と似ているかどうかの判断(類否判断)を行うためです。

先に話題にしたテスラに関して、登録商標「TESLA」(登録5379250号)の公報を見てみましょう。

J-PlatPat 商標公報第5379250号より引用

公報には、「称呼(参考情報):テスラ」との記載があります。「テズラ」が正しいのであれば、「テズラ」で出願すれば良いのに、と思われる方もいるかもしれません。

しかし、ここで表示される称呼はあくまで参考情報として特許庁が一般的な読み方として想定されるものを付与しているものであって、出願人が指定したものではありません。実は、出願人は商標の称呼(読み方)を指定することができないのです。

では、出願人が称呼を指定できないのであれば、どのようにして称呼を定めて類否判断を行うのでしょうか。

特許庁が公開する審査基準においては、称呼は「需要者が、取引上自然に認識する音」とされています。つまり、審査官は、需要者(商品を購入する人など)が商標を見たときにどのように読むのが自然なのか、を想像して称呼を定めます。このとき、称呼がひとつであるとは限りません。漢字による商標であれば音読みと訓読みが考慮され、アルファベットによる商標であれば英語の読み方・ローマ字の読み方などが考慮されるでしょう。ただし、「自然に認識する音」ですので、あまり不自然な読み方は採用しません。審査基準の例を挙げれば、「竜田川」は「タツタガワ」というが称呼が自然であり、「リュウデンセン」という不自然な称呼は生じないとされています。

なお、公報に記載された称呼は参考情報ですので、他人の商標を調査する場合には記載された称呼が権利範囲を示すものでないことに注意が必要です。例えば、商標自体は登録商標に似ているが読み方が異なるからOK、ということにはならないということです。

ちなみに、上で挙げたASUSは、2012年に「エイスース」が正しい読み方であると公式に発表されています。個人的には、それまで「エイスース」と読んだことがなかったため、「そんな読み方するの!?」と、ちょっとした衝撃を受けた記憶がありますが、2012年以前に出願されたASUSの登録商標(登録3053914, 4386338,4830768号)の公報を見てみると称呼には「アサス,エイサス,エイエスユウエス,アスス」などと記載されており、2013年に出願された登録5617585号でようやく「エイスース」の称呼が登場します。特許庁にとっても、「そんな読み方するの!?」という感じだったかもしれません。

安田 宗丘

弁理士。特許業務法人コスモス特許事務所勤務。

専門分野は機械。某電子部品メーカーでエンジニアとして約13年間勤務。
娘の“アナ雪“好きにつられ「ありのまま」の自分を模索する中、弁理士試験合格を機に特許事務所へ。転職とともに神奈川県民から愛知県民となり、慣れない土地と仕事に日々奮闘中。