自社製品への挑戦

小売事業者が自社製品開発に取り組み始めるケースが増えています。売れる自社製品を持つことができれば、商材をコントロールしやすくなり、利益も確保しやすくなるからです。また、自社製品によって自分の意志で勝負することができるため、多くの業種の事業者がチャレンジしたいと考えます。

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特許権という障壁

自社製品を作るということは製品に責任を負うことになるため、多くの壁を乗り越えなければなりません。その1つとして、他社の特許権の侵害リスクがあります。

小売として他社製品を仕入れて販売する場合は、商品の特許権などにはそれほど意識しません。多くの場合は、製造元が特許調査などによって予め対策しているからです。それが自社製品ともなれば自ら他社の特許権を調査し、必要な対策を施すようにしなければならなくなります。

特許権を侵害すれば損害賠償や製造販売の差し止め、謝罪などを求められることがありますし、和解したとしても後には売価に乗せにくいライセンス料を条件とされることもあります。そのため特許権の侵害については慎重に見極める必要があります。

特許調査をどこまでするか

製品開発には特許調査は必要ですが、どこまで特許調査をするかが問題となります。特許権侵害のリスクを減らすためには幅広く調査をすることが望ましいですが、他社特許が「存在しないこと」を証明するのは事実上不可能ですので、どの程度まで労力をかけられるのかを検討する必要があります。自社内で調査をする場合はかかる時間や人数など、外部機関に調査を依頼する場合は費用の範囲など、予め計画を立てて取り組みます。

仮に、他社に特許権の使用料(ライセンス料)を支払うこととなると一般的には売値の3~~10%が設定されることが多いです。開発する製品の販売計画などから売上規模を勘案して、万が一他社の特許権に当たった場合に生じるライセンス料を1つの目安として、特許調査の範囲を考えてみてもよいかもしれません。また損害賠償や差し止めともなれば影響額はより甚大なものになりますので、リスク発生の確率やビジネスへのインパクトの度合いなどを踏まえて特許調査を計画します。

どの部分について特許調査が必要か、という点については、新しいと思える特徴は調査をした方がよい点でしょう。特許というのは新規の発明に対して与えられるものであることと、そういった画期的なポイントは同業者も同じような時期に考えていることが多いことによります。

特許調査によって侵害リスクは低いと判断した場合、こちらから特許取得に動けるチャンスでもあります。新しい特徴に対して他社が特許権をもっていなければ自社で特許を確保してしまうのです。

特許取得は参入障壁になる

他社の特許権は自社に対する参入障壁として働きます。このことは裏を返せば、自社が特許権を持っていれば新参の他社に対する障壁ともなり得ます。これから自社製品を考える場合、製品の価値とともに特許権をはじめとする知的財産権を押さえておけば、他社をけん制して市場で有利に動けるようになります。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)