職務発明

リンカーン大統領の特許政策

知的財産権の制度の特徴の一つに、独占的な権利を国が発明者にあげることにあります。独占的な権利をあげるのは発明者のやる気を出させるためです。いい発明がたくさん出てくることで、世の中が便利になり世の中を発展させていく、そのために知的財産権制度は存在しています。

この知的財産権の制度をうまく表現したのが、アメリカの大統領のリンカーンです。リンカーンは「特許制度は、天才のやる気に油をそそぐ制度である」と言っています。すなわち、どんな天才でも独占できるというメリットがなければ、わざわざお金と労力をかけていい発明を開発しようとはしません。独占的な権利をもらって自分だけが販売でき大きな利益をあげれる可能性があるからこそ天才も頑張るということを意味しているのです。

リンカーンはこの本質を見抜いていたため、大統領に就任してすぐに特許制度に力をいれアメリカを発展させていくのです。例えば、1800年代後半に、エジソンが電球を開発したり、ベルが電話機を発明したのもリンカーンが特許制度を整備したことに関係していると言われています。1800年台にエジソンが作ったGEという会社は現在でも世界で第2位の規模を誇る会社として残っています。その土台はエジソンの発明による利益がもたらしたものとも言えます。

特許制度が「天才のやる気に油をそそぐ制度」であるのは現在も変わりありません。会社は新しい発明を作り出すことができれば発明に独占的な権利が与えられ、売上を伸ばすことができます。

 

会社員でも職務発明で評価される

また、社員の方には職務発明制度というのが法律上は規定されています。以前、青色発光ダイオードの発明を開発した中村教授に一審で200億円の支払いを命じた裁判例がありました。最終的には、8億円ほどで和解することになったのですが、それでも社員の方でも8億円を企業からいただけた裁判例です。

中村教授がなぜ8億円をもらうことができたのかというと、それは日本の法律に職務発明規定があるからです。職務発明とは、企業内で社員の方が発明し権利を企業に渡した場合には、企業がその社員の方に報奨金のような形でお金を支払う制度です。

社員の方は自分の才能と時間を掛けて会社のために働くため、それに対する報奨金が支払われる制度です。この職務発明制度があることで、社員の方もやる気が起こるわけです。

知的財産権の制度を使えば、会社がその技術を独占して儲けることができるためやる気が起こります。

また、従業員も売れる発明を作ることができて会社に貢献できれば、出世の他に報奨金がもらえるかもしれません。

知的財産権の制度を使って好循環の企業体制を作っていくのも一つの方法ではないかと考えます。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)