スマホゲームの権利

スマホの普及とともに「ゲーム」も大きく変わってきました。スマホゲームが広がる中、昨年にはゲーム「白猫プロジェクト」が自社の特許権を侵害しているとして、任天堂がコロプラに対して製造・使用・インターネット回線を通じた配信の差し止め、及び、44億円の損害賠償を求める訴訟を起こす事件があり、話題となりました。
スマホゲームでは開発・リリースのスピードが重要といわれます。スピード先行で特許調査が不十分になると、特許権侵害となるリスクが高まります。

スマホゲームのような新興の業界では場合によっては特許などの他社権利への配慮が薄くなることもあるかもしれません。しかしながら、せっかくリリースしたゲームを安定して継続運用していくためにも、事前の特許調査や特許出願などはしておいて損はないでしょう。

photo by PIXTA

カードゲームを守りたい

ゲームと言えばでも「カードゲーム」というものもあります。特許事務所ではカードゲームについて特許出願したいという相談を受けることもあります。
これまでにない新しいカードゲームであれば独占して利益を得たいと考えるのは発明者の考えとして当然です。しかし、残念なことにカードゲームの内容については、特許権でも著作権でも保護することは難しいのが実情です。特許では自然法則を利用した技術的思想の創作である発明を権利の対象としているのですが、カードゲームの方式・ルールなどは自然法則を利用するものではなく、単なる人為的な取り決めであるとして発明とはみなされません。ビデオゲーム・スマホゲームのようにソフトウェアとして実現されているものは、電気的な法則を利用している面を考慮して特許を取得できる可能性もありますが、カードゲームのルールで特許を取得することは難しいのです。
一方の著作権でも、対象を美術等の具体的な創作物を対象としているので、こちらもカードゲームの方式やルールなどが対象となることはなりません。
カードゲームの内容で取得できる権利がないと聞くと落胆される相談者も多いです。

カードゲームの方式やルールそのものについて知的財産権を取得することは難しいのですが、何も手がないというわけではありません。
例えば、コナミ「デュエルマスターズ」のようにゲームの名称について商標権を取得することでニセモノを排除することが考えられます。また、カードに描かれているイラストは著作権の対象でもありますし、意匠権を取得できる可能性も高いです。ルールブックも文芸の著作物として著作権で保護される可能性があります。
カードの形状や材質などに特徴があれば、それらについては特許権実用新案権の取得も不可能ではなくなります。
カードゲームの名称やカードそのものを知的財産権で保護することにより、そのカードゲームの全体を間接的に保護するという戦略が成り立ちます。

ゲームなどの娯楽分野でも知的財産権に関する意識は以前よりも高まっていると感じます。この分野でのビジネス展開をお考えの方も、知的財産制度に十分な配慮が必要になってくることでしょう。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)