3回にわたり紹介してきた近時の著作権改正ですが、今回の2019年7月1日に施行分の説明で一通りとなります。
7月1日に施行されるのは「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」に関連して、主に相続や遺言に関する規定が改正されるものです。

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例えば、現行の規定では著作権の移転に関して次にように定められています。

著作権法第77条(著作権の登録)
次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
一 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限

大前提として、著作権(著作財産権)は移転が可能です。
著作権者は契約等で第三者に著作権を譲渡することができますし、著作権者が亡くなった場合には配偶者や子供など相続人が著作権を相続することになります。
ここで問題となるのが著作権が2人以上に重複して移転されてしまった場合です。

例えば、Aさん(著作権者)が、Bさん(友人など)に著作権を譲渡したとします。その後、Aさんがさらに、事情を知らないCさん(他の友人など)に著作権を譲渡する、というケースも可能性としては存在するわけです。

そんな馬鹿な。と、思うところですが、実際にはどちらも契約としては有効ですので、BさんとCさんのどちらが著作権者になるのか、という問題が生じます。

先に紹介した現在の著作権法(著作権法77条)では、譲渡のタイミングの前後ではなく、文化庁に著作権の移転の登録をした人が、第三者に対抗できるようになっています。
「対抗」とは、他人に「自分が著作権者だと主張できる」ことです。いくらBさんの方が先に譲渡されていたとしても、Cさんが移転の登録を済ませていたとすると、CさんはBさん(AさんとCさんの関係においてCさんにとってBさんは第三者)に対してAさんの著作権は自身に移転したと対抗できます。逆に言えば、Bさんは自分が著作権者だとは主張できないのです。

この規定が、2019年7月1日から次のように変わります。

著作権法第77条(著作権の登録)
次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
一 著作権の移転若しくは信託による変更又は処分の制限

以前の規定から「相続その他の一般承継によるものを除く。」の文言が削除されました。
以前は、相続その他の一般承継による移転については、著作権の移転の登録とは関係なく第三者に対抗することができましたが、その例外がなくなったのです。

今回の改正の根拠となった民法第899条の2第1項では、相続による権利の承継について「法定相続分を超える部分については登記等の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。」とされています。

改正著作権法第77条(と出版権の88条)は、この民法の規定に基づいて改正をしているため厳密にいえば、相続その他一般承継による場合は、著作権の移転の登録をしなければ、法定相続分を超える部分について第三者に対抗することができない、ということになります。

例えば遺言によって著作権の全部を誰か1人が相続した場合でも、法定相続分を超える部分が生じる場合には文化庁に移転の登録をしなければ第三者に対抗できなくなってしまいます。

そのように考えると、譲渡の場合はもちろんのこと、相続その他一般承継の場合であっても、著作権を移転を正当化するためには、文化庁に「著作権の移転の登録」をしておくのが無難であると考えられます。

全4回にわたって著作権法改正について説明させていただきました。この内容が皆様の実務や生活の一助となれば幸いです。

参考文献

愛知県出身。弁理士。
現在は東京に住んでいるが、
慣れ親しんだスガキヤのラーメン(ソフトクリームは必ず付ける派)が食べられず、寂しい思いをしている。