コラム
Column
少し前の話ですが、トヨタ自動車がハイブリッド車(HV)の関連技術について、約23,740件もの特許を他社へ無償提供すると発表しました。
トヨタ、HV特許を無償開放=2万件超、市場拡大へ戦略転換 – JIJI.COM
HV特許技術を開放することで、トヨタ自動車がこれまで培ってきたHV技術をシステムサプライヤーとして提供していく方針とのことです。トヨタ自動車は、自動車メーカーから「モビリティカンパニー」に変革を遂げると宣言しているように次々と新しい施策や提携を発表しています。
トヨタが世界初のハイブリッド車である初代プリウスを発売したのが、1997年です。「21世紀に間に合いました」のフレーズを覚えている方も多いかと思います。不可能と言われていたHVを世界に先駆けて量産したトヨタがHV技術で世界のトップを走っていたことは疑いようがありません。
HVに関する基本技術はトヨタの特許で強固に守られている、と言われていました。
特許権の存続期間は20年(出願から20年)です。つまり、1997年当時に開発した初代プリウスに関するHV技術の基本的な特許権は全て2017年頃には消滅しています。そうすると、今回無償開放されるHV特許には、初代プリウスのHV技術の中核をなす基本特許は含まれていないと言えます。
それでは、今回開放されるHV特許は以前の技術に比べて価値が低いのでしょうか?
答えは、「No」です。初代プリウスと現行プリウスとではハイブリッド車としての燃費や走行性能等の完成度が全く異なります。初代プリウスから20年以上、トヨタの技術者達が日夜努力して改良に改良を重ねた結果である技術(特許)が今回開放されるのです。
期限切れで消滅した特許の技術を用いても、初代プリウスの水準のクルマしか作ることが出来ません。もはや時代遅れともいえるような技術ではなく、トヨタ自動車以外の車両メーカーが現行プリウスと同等のクルマを作ることが出来るようになるというのが、今回の特許開放の意義だと考えます。
さらに、PHVやEVに代表されるようにクルマも充電されるのが当たり前という時代が既に到来しています。これらの技術は直近10年間で各社が凌ぎを削って開発されたもので、この分野に関する特許も無償開放されるのです。
私は、仮に10年前に特許が開放された場合よりも、更に価値のある技術が今この時に開放されると考えています。
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