行動経済学という言葉をご存知でしょうか?経済学と心理学を組み合わせたような分野で、最近では関連する書籍も多く出版されています。行動経済学では、個人の心理的な現象が主に経済的行動(商品の購入や嗜好など)に対してどのような影響を及ぼすのかといったテーマについて議論されることがあります。

予測の効果

私が読んだある書籍(ダン・アリエリー「予想通りに不合理」)に予測の効果という興味深いテーマがありました。たとえば同じ何かを食べるにしても、事前に「美味しそう」と聞いていたか、「美味しくないかもしれない」と聞いていたかによって、実際に食べた際の印象が変化するそうです。高級な食材がほとんど分からないくらい料理に入れらるものだとして、その食材が入っている料理だと聞いてから食べれば、(その高級食材がたとえ味覚にほとんど影響のない程度の量だとしても)なんとなく特別で美味しい料理だと感じるのではないでしょうか。

書籍では、このテーマに関連することとして、コカ・コーラとペプシのキャンペーン合戦の分析にも言及がありました。それぞれが相手の商品と自社の商品を飲み比べてもらう街頭アンケートをしたものですが、どちらの商品か知らずに試飲した場合と、予めどちらがどちらの商品か知った上で試飲した場合とで、多く選ばれた方が違ったのだそうです。これは「よく飲んでいる方」「美味しいと印象付けられている方」という商品名やブランドの印象が、実際の商品の違い以上に試飲の結果に影響を与えたということができそうです。

ブランドの力

こうしてみると、既に広く認知されているところですが、商品戦略においてブランドは重要であると考えられます。コカ・コーラとペプシの話によればブランドの印象は、消費者が受ける商品に対する価値にすら影響を与えるのですから。ブランドの良いイメージを持たせた状態で商品を手にしてもらえれば、その商品に対する印象は、品質や機能のよって得られる価値以上の素晴らしいものにもなり得る、ということになります。

ブランドは一朝一夕に確立できるものではありません。長い時間をかけて品質を維持し、機能を高め、広告などで普及することで、世間に浸透します。このような「ブランド」を知的財産として保護するのが商標法です。商標法に基づいてブランドを商標登録することで、築き上げたブランドが模倣されたりすることを防ぐことができます。商標のこうした目的を踏まえて、商標登録は特許などとは異なり、申請によって永続的に更新できることとされているのです。

専門的な用語でいえば、商標法は「商標に化体した業務上の信用」を保護しているとされます。ブランド(商標)に築きあげられた信用は、商品による体験をも向上させることができるものです。

後藤 英斗

弁理士、情報処理安全確保支援士(登録セキュリティスペシャリスト)
発明プラスでは外部ライターとして主にIT系の記事を担当しています。