コラム
Column
大学の名前には、「地名」と「専門」が組み合わされたものが多くあります。大学という組織が、地域に密着して学問を学ぶという性質を持っている以上、どうしても似たような名前が増えてしまうことは致し方ないことです。
大学の名前で話題になったのが「京都芸術大学」という名前です。「京都造形芸術大学」が2021年の開学30周年を記念して「京都芸術大学」への名称変更を発表したことに対し、「京都芸大」「京芸」などの略称で知られている「京都市立芸術大学」が、混同が生じるとして「京都芸術大学」の名称使用の差し止めを求めて訴訟を起こしたのです。
裁判で最終的にどのような判断がされるのか、現状ではわかりません。ただ「京都市立芸術大学」としては、「京都芸大」「京芸」などの略称で知られていることを立証し、名称変更された場合には需要者が間違うおそれがあることを主張していくことにはなるでしょう。これは不正競争防止法という法律を根拠にしたもので、商標登録がない場合でも名前が有名であったり、略称として有名であるような場合には訴えることができるものです。しかし、有名であることを主張立証しなければならず、アンケートをとるなど多くの証拠を揃える必要があります。裁判の行方がどうなるかは裁判所に出される証拠などを見ていくしかありません。
商標登録をしていれば、その商標権に基づいて裁判をすることができます。この場合には、不正競争防止法とは異なり、有名であることの立証の必要はありません。なぜなら、商標権は審査等を経て商標の独占を国に認められた権利ですから、それを侵害する者に対して商標としての存在を示すことなく権利を行使できるからです。商標権を持っていると安定して名前を守っていくことができると言えます。
では、「京都芸術大学」の商標登録はだれが持っているのでしょうか。調べてみたところ現在は登録はありませんが、2019年7月18日に「京都市立芸術大学」が商標出願をしていることを確認できました。そして驚くことに、その一日前の2019年7月17日に「京都造形芸術大学(学校法人瓜生山学園)」が商標出願をしていました。商標制度は先願主義をとるため、1日でも早く出願した人が有利になります。そのため、先願主義に着目すれば「京都造形芸術大学」が有利な状況にあります。
商標登録されるには、先願主義のほか誰の商標であるかはっきりしていること(識別性)が条件となっています。そのため、現状このように揉めている段階で商標登録されるかは特許庁の判断になります。それでも商標出願が1日遅い「京都市立芸術大学」は、「京都造形芸術大学(学校法人瓜生山学園)」より、登録される可能性は低くなっています。ありそうな名前だからこそ、有名であるという事実に頼るのではなく、事前に商標登録をしておくことの重要性を認識させられる事例だと考えます。
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