大手企業が特許開放

新型コロナウィルス感染症が広まっていた緊急事態宣言下で「新型コロナウイルス対策に関する技術開発を後押しするため、トヨタ自動車やキヤノンなど約20社が特許をはじめとする知的財産を無償で開放する」ことがニュースになっていました。世界保健機関(WHO)が新型コロナのまん延収束を宣言するまでこの感染症への対策に関する限り各社の特許などを無償で使えるようにするそうです。特許を独占するのではなく広く使ってもらうことで、治療薬や診断技術、医療機器など新型コロナウイルス対策に関する技術開発を進め、早期に新型コロナウィルスを克服することが目的です。

緊急時でも特許の独占権は健在

特許を無償で開放するとのニュースでしたが、裏を返せば緊急事態であっても特許権は有効であるということでもあります。新型コロナの特効薬の開発であったとしても、その特効薬が特許技術を使っている場合にはその特効薬には特許権があるため、権利がない人は原則として製造販売をすることはできないのです。これは特許権が財産権であり、財産はたとえ緊急事態であっても保護されることを意味しています。

公共の利益のための実施権

しかし、特効薬があるならばすぐに作って欲しいものです。特効薬を作る妨げになる特許権がある場合に、公共の利益のためであれば例外的に実施を認める裁定通常実施権(特許法93条)という制度があります。本来、特許権者のみが実施できる特許発明を、公共の利益の保護・増進に特に必要であるときには経済産業大臣の裁定をもって実施できるとする例外的な規定です。ただし、この制度はこれまで一度も使われたことは無く、現在の新型コロナの状況でも使われてはいません。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)