コラム
Column
2019年6月、アメリカの有名セレブであるキム・カーダシアンさんが自らの矯正下着ブランドに「KIMONO」と名付けて発表したところ、抗議が殺到したというニュースがありました。キム・カーダシアンさんはインスタグラムのフォロワーが約1億4000万人(当時)もいる世界的な有名人です。その方が矯正下着に「KIMONO」と商標を付けて世界中で販売を開始したら、日本の文化である「着物」が誤ったイメージを持たれてしまうのではないかということで物議を醸しました。最終的にはブランド名を変更することにしたようです。
商標登録をするにあたっては、登録する商標と商品を特定する必要があります。
商品「着物」についての「KIMONO」という商標は一般名称であるため、商標登録はされません。しかしながら、商品が「矯正下着」となると商品「着物」との関係性は薄くなるため一般名称ではないと判断されて登録が認められる可能性もありました。商品「携帯電話」について商標「APPLE」が認められているのと同じ考え方です。他に日本的なもので商標登録がされていないか調べたところ、商品「釣り具」について「WASABI」という商標の登録がありました。
何かのごく一般的な名称であったとしても、そのものとはまったく別の商品について用いるのであれば商標登録が認められうるということです。
今回はキム・カーダシアンさんが有名人で話題になったため抗議が起きましたが、キム・カーダシアンさんのように有名でなければ知らないうちに商標登録がされていたかもしれません。
今回の「KIMONO」のように、一般的な言葉を関係性の薄い商品で商標登録することはよくあります。そして、そのような商標はいいネーミングだという考えもあります。法律上は問題なく登録される可能性があること、そして「KIMONO」のように一般的に知られている言葉であれば、消費者が商品のイメージをしやすいためです。今回の矯正下着の場合も、着物を着ているときのように背筋が伸びて姿勢が良くなるといったイメージがあったと聞きます。よく知られた言葉のイメージを利用してネーミングをすることはいい戦略であるといえるでしょう。
ただ法律的には問題がなくても、一般消費者に受け入れられるかどうかは考えなければいけません。炎上してしまうとブランドイメージを損なう可能性もあります。今回の事件は世界中にフォロワーを持つキム・カーダシアンさんだから起きたともいえますが、そうでなくてもネーミング自体は多くの人の目に触れるものです。法律面はもちろんのこと、モラルや社会のルールに反していないかについても検討する必要があるでしょう。
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