大量製造の時代は終焉

現代は大量生産・大量販売の時代ではなくなり、小ロット生産・小ロット販売の時代になったと言われています。小回りのきく中小企業にとってはチャンスです。小さな市場においては、知的財産権が有効に働くことがあります。市場が小さければ参入してくる企業も限られ、そこで更に知的財産権をおさえることによって、市場を独占できる可能性が高まります。

ニッチな市場でのアイデアに「鶏肉ささみ用筋取り具(実用新案登録第3218011号)」があります。鶏のささみの筋を取るための専用包丁のアイデアです。鶏のささみはダイエット向きの食品として人気がありますが、味や食感をよくするには筋を取る必要があります。その筋が取りにくいと感じたことから生まれたのが本考案です。写真にあるように二股のピンセットのような包丁となっており、筋を挟み込んで引き抜くことができます。

アイデアを借りて製品化

このアイデアを使って製品化したのが愛知県豊田市足助町にある廣瀬重光刃物店です。当店は、鍛冶職人の廣瀬友門氏が7代目となる歴史のあるお店です。同氏はこれまでもさまざまな新しいジャンルの刃物を作ることに挑戦されています。そして今回、同じ豊田市の発明家から生まれたアイデア「鶏肉ささみ用筋取り具(実用新案登録第3218011号)」を使って製品化に取り組みました。発明家のアイデアと職人の技術がマッチングしたのです。

このようなマッチングの面白さは、職人の技術が既存のアイデアに投入されることです。培ってきた職人の技術がアイデアに投入されると、独創的なだけでなく使いやすさ等が格段に良くなった製品になります。特にアイデアが早期の試作段階であるほどその傾向が顕著です。

クラウドファンディングの活用

ニッチな市場への挑戦には勇気が必要です。そこで、市場調査の意味も含めてクラウドファンディングから始めることがおすすめです。今回の「鶏肉ささみ用筋取り具」は「平成30年度豊田市開放特許活用による製品開発支援事業」によってアイデアが提供され、製品化につながりました。今後はクラウドファンディングを活用して市場調査を行い、販売していくことを計画されているそうです。

ニッチな市場で役立つ知的財産権。それをシェアして製品化するのは時代の流れであるとも感じています。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)