著作権侵害の疑いアリ

自社のPRとしてSNSを活用するケースが増えています。飲食店などではインスタグラムを使って「インスタ映え」する写真をアップすることで、売り上げが上がったという話も聞きます。しかし、その一方で著作権のトラブルも増えています。写真をSNSにアップしたところ、それを見た外部の人から「著作権侵害ではないですか」と言われ、相談に来られる方もいます。

引用元を書けばセーフというものでもない

著作権に注意をしている方の中には「引用元を書いて違法にならないようにしている」とおっしゃる方もいます。しかし、この「引用」への理解の誤りによって著作権侵害となってしまっているケースも見受けられるのです。例えば、自分のことが新聞に掲載されたときに、引用元を記載しているからといって新聞社の許可をとらずに新聞をそのまま掲載することは、著作権の侵害となる可能性があるので注意が必要です。

引用元を書くのは最低条件ではありますが、それをすれば違法性がなくなるというわけではないのです。もちろん法律(著作権法)にも「引用元を書けばOK」とは書いてありません。

引用が認められる基準

そもそも「引用」とは、他人が作った著作物を自分の著作物の一部に利用することをいいます。文化を発展させるうえで他者の権利を侵害せずに自己の著作物の表現に利用できるよう「引用」という著作権の例外を法律が認めているのです。

本来は著作権の侵害となるところを例外的に認めているのが「引用」であるために、そこには厳しい条件があります。その条件とは

  1. 主従関係が明確であること(明確性)
  2. 引用部分が他とはっきりと区別されていること(明瞭区別性)
  3. 引用をする必要性があること(必要性)
  4. 出典元が明記されていること(出典)
  5. 改変しないこと

です。これらの条件を満たさないと著作権の侵害となります。「引用元」を記載しているというのは、④の条件を満たしているだけに過ぎないのです。

主従関係が重要

一つ目の条件である「明確性」とは、作成しているコンテンツにおいて、量的にも内容的(質的)にも、オリジナル部分がメインであって引用部分はあくまでも補足でなければならないというものです。

SNSなどで新聞の写真などをアップして「引用元」を書くだけではいけないのは、この条件を満たしていないためです。オリジナル部分に対して、引用する量が多くなると主従関係が逆転してしまうため注意が必要です。

自分が新聞に掲載されると、嬉しくてSNSなどにあげたくなってしまいます。ですが、自分もされて嫌なことであれば著作権者も嫌なはずです。特にビジネスでSNSを活用される場合には「引用」について十分気を付けて下さい。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)