広がる副業

ここ数年、政府は少子高齢化による働き手不足の問題等から働き方改革を進めています。その一つとして副業を広く認めていこうという動きがあります。

従業員にとって、単に収入が増加するだけでなく、新たな知識やスキルが身につき自身のキャリア形成につながることや、自律性が養われるといったメリットがあると言われます。積極的にやっていきたいという方も多いでしょう。本業の企業にとっては、人材の育成というメリットはあるものの、技術流出や情報漏洩といった不安要素もあります。しかしながら、コロナショックを契機とした働き方への考え方の変化もあって、副業が広がっていくことは間違いないと思います。

職務発明

副業をする際の知的財産権の問題の一つとして職務発明があります。「職務発明」とは、会社の業務範囲に属し、発明をするに至った行為が従業員の現在または過去の職務に属する発明のことです。例えば、自動車メーカーの研究員が燃費のよいエンジンの発明をした場合は職務発明に該当します。

従業員が本業の業務で発明した場合に、職務発明の権利帰属が本業の企業側にあることは明らかです。しかし、仮に副業の上でも本業と関係する発明を行った場合、職務発明の権利がどこに帰属するのかについては問題となってくることもあるでしょう。発明とは、発明者個人の「頭の中」で行われるものであり、どこで働いているときに創作されたのか、判断できないケースも想定されます。

そもそも、同業他社での副業を認めるケースはほとんどないと思いますが、もし従業員に副業を認める場合には、職務発明にあたる発明をしていないか気にかけてください。

自由発明と業務発明

従業員の発明の中には職務発明のほかに「業務発明」と「自由発明」があります。「業務発明」は、会社の従業員がその会社の業務範囲内で、自己の職務以外のものについて発明した場合のことをいいます。自動車ディーラーの営業マンが燃費のよいエンジンの発明をした場合があたります(営業マンはエンジンの発明をする職務を与えられていない場合がほとんどだと思います)。「自由発明」とは、従業員がその会社の業務範囲外で生じさせた発明のことをいいます。例えば、自動車メーカーの研究員がよく切れるハサミの発明をした場合があたります。これらの発明については、発明が職務発明として会社に帰属しないため問題とはなりません。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)