人形

おもちゃはどこまで似ているとアウトなのか?

「ある人気のおもちゃと似た商品を作ろうと考えています。その場合知的財産権で気を付けることはありますか?」といった質問を受けることがあります。

人気商品が出てきたときに、似たような商品が出てくることはよくあります。弁理士として仕事をしていると知的財産権を取って守るだけではなく、どのように回避して新しい商品を作るのかという相談を受けることがあります。

まず、新しい商品を作ろうとするときには、必ず一度はアイデアの権利である特許権・実用新案権、デザインの権利である意匠権、名称の権利である商標権を調べることをするのが安全だと伝えます。作り始めてから、製品の製造を止められてしまうと設備投資が無駄になってしまうからです。さらに、特許権や意匠権、商標権はデータベースなどで調べることができるため、知らずに相手の権利を使ったとしても、「調べない方が悪い」ということになるので注意が必要です。

ただ、特許権や意匠権といったものは調べることができるからまだいいのです。困るのが、登録手続しなくても権利が存在する著作権です。どの範囲で作っていいのかは専門的な判断が必要となりますし、最後は裁判所で決着をつけることにもなりかねないからです。

工業製品は著作権で保護されない!?

昔、しゃべる人形のファービー人形というものがはやったのを覚えていますか?ファービー人形が売れているのを見て周りの業者は同じような商品を作りはじめました。真似された企業は面白くないため、偽物のファービー人形について著作権で訴えを起こしたのです。

最終的に、仙台高等裁判所は、平成14年7月9日にファービー人形の著作物性について、以下のように判断しています。

「ファービーの最大の特徴は、各種の刺激に反応して動作し、言葉を発する点に有り、その形態・外観には電子玩具としての実用性及び機能性保持のための要請が濃く表れ、美観をそいでおり、全体として美術鑑賞の対象となるだけの審美性が備わっているとは認められず、純粋美術と同視できない

難しく書いてありますが要約すると、
「外観上に美術鑑賞できるくらいの美しさがないと著作権の対象とならない」ということです。

実用性や機能性については、著作権の対象とは基本的にはなりません。外から見える外観上に美術鑑賞の対象となるだけの美しさが必要だということです。

美術鑑賞の対象となるというと何時間かその商品の前で見ていても大丈夫という判断です。そのため、工業製品について権利がない著作権を検討するときには、その商品が長時間眺めていても飽きないくらいの美しさを持っているかが判断基準の1つとなります。
ただ、この判断基準も大変あいまいです。あいまいであるとそれだけ争いも起こりやすくなります。

訴えられるリスクを避けるのであればあまりにも似た商品を作らない方が安全でしょう。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)