ファッション

知的財産権をどう選ぶのか!?

私たち弁理士が扱う知的財産権には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権など様々な権利があります。依頼者から相談された時、複数の権利からどの権利が適しているのかを考えて提案していくのも弁理士の仕事の一つです。

依頼者からの相談で「どの権利が一番お得なの?」ということを聞かれたことがあります。

これは大変難しい質問で、ケースバイケースになってしまうのですが、私としては、事業を長く続けていくのであれば商標権はお得といえるのではないかと思います。

その理由は、保護期間にあります。他の権利は一定の期間で権利が消滅しますが、商標権だけは更新によって永続的に持つことができます。
例えば、意匠権と商標権を比較すると、デザインを保護する意匠権は登録から20年で権利が切れてしまいますが、ブランドを守る商標権は5年または10年ごとの更新によって権利を持ち続けることができます。

意匠権の対象であるデザインは作った時点では世間にインパクトを与えたりして価値が最も高いのですが、時間が経つにつれてありきたりなものとなると価値はどんどん低くなります。そのため、意匠権は長い間もっていても価値が増すということはほとんどありません。発明・考案を対象とする特許権、実用新案権も同様です。

反対に、商標権の対象であるブランドは作った時には価値は小さいですが、ブランドを使うにつれて信用力や名声という目には見えない価値がつきます。その結果として、ブランドを保護する商標権の価値が高まります。
このように、商標権は、時間の経過とともに価値が下がるどころか、どんどん高まっていく権利なのです(もちろん高める努力は必要ですが)。

例えば、ファッションブランドの「コム・デ・ギャルソン」は1969年に設立していますが、事業開始当初はもちろん、その名称にそれほどの価値はありません。しかし、「コム・デ・ギャルソン」は、斬新なデザインの製品を出し続けていくことで、次第に有名となり、現在ではその名称・ブランドの価値が高まっています。このように企業活動を長く続けていくとブランドの価値が高まるので、価値が次第に高くなる権利という意味で商標権はお得といえます。

※株式会社コム・デ・ギャルソンの登録商標は登録第5187408号の「コム デ ギャルソン」など

デザイン性をもたせた商標

さらに、デザイン的な商標というものも世の中には存在します。例えば、リーバイスのジーパンの後ろポケットには弓型のステッチがあります。この弓型のステッチについては、リーバイスが商標権(登録第2006244号)を持っているため他のジーパンのメーカーは弓形のステッチを使うことができません。
実際に、弓形のステッチをジーパンに付けたことで商標権侵害として訴訟になった事件もあります。リーバイスは、商標権を押さえることで、ジーパンのポケットのステッチのデザイン性についても保護している面白い事例です。ちなみにリーバイスのポケットの弓型ステッチの商標は、アメリカで継続して使用されている商標で最も古いものの一つとなっています。その他にも、アディダスの三本ラインもデザイン的な商標権と言えます(登録第4522862号など)。

商標権はうまく使えばデザインにまで権利を及ぼすことができます。そのため、使い方次第では商標権がお得な権利といえるとも考えられます。

富澤 正

弁理士。当サイト『発明plus(旧:開発NEXT)』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)